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【M&Aサマリー】2018年上期の買収は283件、海外M&Aは47件
東証の「適時開示」ベースで、2018年上期の買収件数は283件。このうち日本企業による海外M&Aは47件。ただ、上期中2番目の大型案件である富士フイルムHDによる米ゼロックスの子会社化はゼロックス側大株主の反対などで事実上頓挫を来している。
東芝<6502>が紆余曲折の果てに半導体子会社「東芝メモリ」を米Bain Capital主導の「日米韓企業連合」に約2兆3億円で売却して3カ月が過ぎた。東芝最大の稼ぎ頭事業で「虎の子」とも呼ばれた東芝メモリを売却せざるを得なくなった原因が、M&Aで傘下に入れた原子力子会社・米ウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニー(WH)の経営破綻に伴う巨額の損失だ。
国内マスメディアは東芝の不正会計と批判を繰り広げたが、本当にそうか?「東芝事件総決算-会計と監査から解明する不正の実相」を上梓した公認会計士で、ビズサプリの久保惠一パートナーに聞いた。
-2018年7月31日に東芝が保有するWHグループの英国企業の全株式を、カナダ系投資ファンドに売却を完了しました。同4月に売却したWH本体分も含めても、売却総額はたった112円(1ドル)。東芝が約6500億円を投じた巨大M&Aは惨憺たる結果に終わりました。
西田厚聡社長(当時)がWHを買収した判断は、結果はともかく意思決定した2006年当時は間違っていたとは言えないと思う。当時は地球温暖化問題がクローズアップされ、世界中で原子力発電の見直し機運が高まっていた。東芝の原発は日本でしか売れず、世界中で実績があるWHを買収すれば販路は海外へ広がる。
さらに同社が持つ加圧水型原子炉(PWR)技術を取り込むことで、東芝が持つ沸騰水型原子炉 (BWR) と併せて両タイプの原子炉をカバーできるようになった。世界全体でみるとPWRの新規建設が多く、同タイプの技術は東芝が原子力事業を海外展開するには不可欠だと判断したのだろう。
学歴:1976年 大阪大学経済学部卒業
職歴:大学在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツに入社。カナダバンクーバーの提携先会計事務所で実務経験。大手メーカーや銀行などの会計監査と株式上場支援を経験。監査法人内でリスクコンサルティング事業を立ち上げ、15名から450名の組織に拡大した。 監査法人トーマツのボードメンバー、デロイトトーマツリスクサービス株式会社代表取締役社長、トーマツ企業リスク研究所所長、情報テクノロジー本部長を歴任。石油公団資産評価・整理検討小委員会、東京電力点検記録等不正の調査過程に関する評価委員会、総合資源エネルギー調査会石油部会、原子力施設安全情報申告調査委員会などの政府委員会に参加。大手信販会社総会屋利益供与事件、信用情報機関の個人情報漏洩事件、東京2020オリンピック・パラリンピック招致に関わる海外支払の調査に関与。 元中央大学大学院客員教授
資格:•公認会計士•カナダ(ブリティッシュコロンビア州)勅許会計士
主な著書:•『東芝事件総決算』(単著、日本経済新聞社)•『水リスク−大不足時代を勝ち抜く企業戦略』(編著、日本経済新聞出版社)•『リスクインテリジェンス・カンパニー』(編著、日本経済新聞社)•『内部統制報告実務詳解』(編著、商事法務)
東証の「適時開示」ベースで、2018年上期の買収件数は283件。このうち日本企業による海外M&Aは47件。ただ、上期中2番目の大型案件である富士フイルムHDによる米ゼロックスの子会社化はゼロックス側大株主の反対などで事実上頓挫を来している。