再生可能エネルギーに「逆風」が吹き始めている。固定価格買取制度(FIT)により、既存の火力発電や原子力発電に比べて割高であり、エネルギー市場での競争力がないというのだ。

確かに現時点では再生可能エネルギーを普及するため、割高な買取料金の上乗せをしなければ新規業者は参入しにくいという事情はある。とはいえ、いつまでも電力利用者が上乗せ料金を負担し続けるのは難しい。はたして再生可能エネルギーは、火力や原子力などどのコスト競争に勝てるのか。エネルギー政策に詳しい橘川武郎東京理科大学大学院教授に聞いた。

脱FITこそが再生可能エネルギーを成長させるカギ

-再生可能エネルギーを積極的に増やしてきた欧州で、コスト高などの問題がクローズアップされています。

すでに日本の一般家庭でも、電気料金の10%程度が再生可能エネルギーの賦課金で占めれているのではないか。再生可能エネルギーには将来性があるが、課題も多い。「再生可能エネルギー限界論」の根底には、再生可能エネルギーで発電した電気を国が決めた価格で買い取るよう電力会社に義務づけたFITがある。FITによるサーチャージ(賦課金)負担が重いためスペインやドイツがFITを見直していることから、「再生エネルギーに未来はない」という論調が見られるが、これは本末転倒の議論だ。

-本末転倒というと…。

今後20年先、30年先まで、いつまでもFITに頼っているようではおかしい。本来ならFITなしに再生可能エネルギーを普及できるようにしなければならないからだ。FIT後の再生可能エネルギー普及の仕組みをどうするかについて、本来はもっと議論すべきだろう。

太陽光パネル
再生可能エネルギーを育成するはずのFITが足かせに…

送電網が再生可能エネルギー活用のカギを握る

-FITなしに普及となると、再生可能エネルギーのコストダウンを図らなくてはなりません。可能でしょうか?

日本では太陽光や風力による発電のコストダウンがあまり進んでいない。規制が厳しいという側面もあるが、普及促進のはずのFITにも問題がある。FITによる手厚い保護があるため、事業者に安く発電しようというインセンティブ(意欲向上や目標達成のための刺激)が働かないのだ。脱FITこそ、再生可能エネルギー普及の最大のポイントだ。日本はFITで普及を図ったスペインやドイツをベンチマークとするのではなく、FITなしで太陽光や風力発電の導入が進んでいる米中西部、オーストラリア西部、中国内陸部、北欧をベンチマークとすべきだ。こうした地域は送電網が充実しているか、あるいは送電網なしに電力を供給できる仕組みをつくっているかのいずれかだ。

-送電網の充実というと、具体的にはどのようなことが考えられますか。

原子力発電ひとつとっても、現時点で稼働しているのはわずか7基。福島原発事故時に全国で存在した57基(工事中だった3基を含む)のおよそ半分に当たる30基程度が廃炉になる可能性が高く、その分の送電網を再生可能エネルギーに開放することは十分に可能だ。

-そもそも「送電網の容量がそんなに不足しているのか?」との疑問も出ています。

京都大学のチームが「基幹送電線の利用率が大手電力10社平均で19.4%にとどまる。もっと再生可能エネルギー事業者の送電用に開放すべきだ」と発表する一方で、電力会社側は「万一の場合に電力を安定供給するためには空き容量などは存在しない」と反論している。私は京大のチームが指摘するほどの空き容量はないだろうが、電力会社が反論するほどギリギリではないと考えている。実態はその中間ぐらいだろう。原発廃炉分の送電網とその他の発電所の空き容量を使えば、再生可能エネルギーをもっと多く供給することが可能だろう。

原発廃炉分の送電線容量を使えば再生可能エネルギーを広く利用できる。(Photo By Ayumu Kawazoe)