税理士法人ファシオ・コンサルティングの八木橋 泰仁代表に聞く

仲介、デューデリジェンスなどM&Aに関しては複雑な業務が伴う。大手同士のM&A業務を得意とする事務所もあれば、中小企業いわゆるスモールビジネスに軸足を置く事務所もある。また、事務所によって得意業種も異なる。そんなM&Aの分野で活躍する士業事務所やコンサルティング会社に、M&Aビジネスとのかかわり、大事に考えていること、また自身のキャリアをどう積み上げてきたか、などをシリーズで聞く。その第1回として、税理士法人ファシオ・コンサルティング代表の八木橋泰仁氏を訪ねた。

事業の「場所」や「機会」を確実に守り、残していく意義

ーどのようなM&Aのお仕事にかかわっているのですか。

主に二つです。まず仲介業務。売り手と買い手を比べると、売り手より買い手の会社のほうが多いですね。業種としてはIT系や医療・介護系が多く、規模としては、売上でいうと数千万・数億円のいわゆるスモールビジネスが多いですね。

もう一つの業務はデューデリジェンス(投資対象となる企業や投資先の価値やリスクなどの調査)。これは年間にすると、数件といったところでしょうか。

ー医療・介護系やIT系といった業種は最初から考えていたことですか。

いえ、最初からその業種にターゲットを絞っていたわけではありません。IT系のほうは、M&Aに限らず税理士事務所としての顧問先の割合が一定程度あり、その方々に買収意欲の高い経営者が多かったということです。

一方の医療・介護系も時代の流れかもしれません。M&Aの仕事をやり始めたきっかけは10年以上前、ある顧問先が事業承継で第三者承継を行いたい、いわばM&Aで他の人に売却したいというお話があったこと。仲介業務では売却も購入も、「買ってくれる人・売ってくれる人は誰か」を見つけてくる人脈が重要なポイントです。その案件では、私が前職で大手生保の医療・介護系ビジネスを担当していたことで、その人脈が役立ち、そこから医療・介護系の仲介業務が広がっていったということです。

ーいまもスモールビジネスのM&Aが多いのでしょうか。

ええ。新聞記事になるような買収金額が数百億円レベルの話もありますが、実態としてはスモールビジネスのM&A案件が多いですね。小さな会社では優秀な事業や技術、人材を擁していても、第三者承継ができなければ廃業になることもあり得ます。それをなんとかできないか、とずっと思っていました。

医療・介護系のほうも、医院・クリニックの院長の子どもがそのクリニックの院長を継ぐとは限りません。医者として病院の医局に勤め続ける人も多い。すると、院長が高齢になれば、第三者承継を考えざるを得ないわけです。介護関係にも似たところがありますね。

ー医療・介護系のM&Aで特徴的なことはありますか。

基本は変わりませんが、患者さんや利用者という基盤があったうえでのM&Aなので、案件を進めやすいという面はあります。きちんとしたかたちでM&Aを実現できないと、患者さんや利用者が相当に困った状態になってしまう。「進めやすさ」とは、そうした事態に陥らないよう責任感を持ちながら仕事ができるということでもありますね。

ーそれがスモールビジネスのM&Aの醍醐味にもつながっている?

ええ。特に医療・介護系では第三者承継を通じて、地域を支えている実感は強いですね。次の適任者へバトンを渡す一翼を担っていることに、有意義さを感じます。

それは、言い換えると、事業の「場所」や「機会」を確実に守り、残していくということかもしれません。その点に、通常の税理士業務とはやや趣の異なるやりがいも感じます。