自社株対価のM&Aに注目が集まっている。2018年に「産業競争力強化法」と「税制」が改正されたことによって、資金の乏しい企業によるM&Aや、大型のM&Aの増加が見込めるためだ。武田薬品工業<4502>はアイルランドの製薬会社シャイアーを買収する際に自社株対価による買収を行い、総額約6兆8000億円の買収金額のうち半分強を自社株式で賄う。つまり自社株を対価にすることで3兆5000億円ほどの現金を不要にした。4月の改正とはどのような内容なのか。狙い通りに自社株対価のM&Aが増えるのか。長島・大野・常松法律事務所パートナーの西村修一弁護士に聞いた。

多くの問題が解消

-今回どのような改正がなされたのでしょうか。

「7年ほど前に産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)が改正され、株式対価のM&Aに関する会社法上の制約がなくなった。当時はこれで株式対価のM&Aが増えるのではないかと、法律面での論議は大いに盛り上がった。しかし実際は株式対価のM&Aはほとんど行われなかった」

「その理由は会社法上の制約が無くなったものの税制の制約が残っていたためだと言われている。税制面では、これまでは売り手側企業の株主が、買い手側企業の株式を対価とする買収に応じ、売り手側企業の株式を買い手側企業に譲渡する際に課税負担が生じていた。これが今回の改正で譲渡益への課税が繰り延べられる余地が生まれることになった」

-産業競争力強化法の方はどうでしょうか。

「株式を対価に他の会社の株を買う場合、会社法上は売り手側企業の株主が株式を現物出資した形になる。現物出資を行うには検査役の調査か、専門家の証明書が必要になる。これには時間や手間がかかるため、この方法をとる企業はほとんど無かった。また売り手側企業の株式の価値が下がってしまった場合、売り手側企業の株主や買い手側企業の取締役が下がった分を補償しなければならないリスクがあり、なかなか踏み切れなかった。今回の改正でこうした問題が解消される」

「また7年前の改正では、買収方法が限られていて、TOBだけになっていた。日本のTOBと同じようなことを外国でやるということであれば、実施できることになっていたが、同じような外国の仕組みが何かというのが、よく分からないため、これも二の足を踏む要因となっていたのかもしれない」

「これが今回の産業競争力強化法の改正で、買収方法についてもTOBだけでなく、それ以外の方法による株式取得も行えるようになり、間口が広がった」