上場企業で希望(早期)退職者の募集結果に関する発表が相次いでいる。今年に入って13社(一覧表)を数えるが、約半数の6社は応募者が100人を超える。なかでも最多は富士通で、応募者は3000人(国内グループ企業を含む)以上にのぼった。
富士通が対象としたのは主に50歳以上の幹部社員(定年後再雇用社員を含む)。3月8日、「セルフ・プロデュース支援制度」と名づけた希望退職制度に3031人の応募があったと発表した。同制度は元々、グループ外への転進を希望する社員向けに通年で用意されているが、今回、期間を限定して2月末まで募集した。
顧客企業の業務変革をITで支援するDX(デジタルトランスフォーメーション)分野の事業強化に伴う人員構成見直しの一環だ。
3000人を超える大規模な希望退職は2016年に東芝が実施して以来6年ぶり。半導体やパソコン、家電部門などが対象となり、合計3449人(いずれも正社員)の応募があった。東芝は2017年3月期に米原子力事業で巨額損失を計上し、日本の製造業として過去最大となる9656億円の最終赤字に陥った。
東芝の前年の2015年にはシャープが実施した希望退職に3234人が応じた。液晶事業への過大投資で業績悪化していたシャープは翌2016年、台湾の鴻海精密工業に買収された。日本の大手電機として外資の傘下に入る初のケースだった。
今年、富士通に次いだのはJTの2868人(2月半ばに発表)で、内訳は正社員1169人、営業活動を補佐するパートタイマー1584人、定年後再雇用されたシニア社員115人。同社は昨年2月、正社員を対象に1000人規模の希望退職を実施する計画を公表。たばこ事業の本社機能をスイスに集約するなどの運営体制見直しに合わせて、今年3月末退職を前提に希望者を募っていた。
アステラス製薬は2月初め、昨年12月末まで募った希望退職に国内グループ会社を含めて650人の応募があったと発表した。450人程度としていた募集人員を200人上回った。
フジ・メディア・ホールディングスは昨年11月に、博報堂DYホールディングスは同12月に、希望退職の実施を発表。フジは2月半ば、博報堂DYは1月半ばにそれぞれ募集を終えているが、その結果については公表していない。
今年に入って新たに希望退職者の募集を発表したのは昭文社ホールディングス、スーパーバック、協栄産業、平和、日本アンテナの5社(3月15日時点)。コロナ禍に伴う2回目の緊急事態宣言と重なった昨年の同時期(19社)に比べて約4分の1にペースダウンしている。5社中、日本アンテナを除く4社はすでに結果を発表し、このうち平和は応募255人と最も多かった。
◎2022年に希望退職者の募集結果を発表した上場企業
企業名 | 応募 | 募集 |
富士通 | 3031人 | - |
JT | 2868人 | 約1150人 |
アステラス製薬 | 650人 | 約450人 |
平和 | 255人 | 約250人 |
加藤製作所 | 119人 | 約100人 |
ダイドーリミテッド | 104人 | 約100人 |
東京ソワール | 44人 | 約50人 |
山喜 | 34人 | 約40人 |
常磐開発 | 31人 | 約50人 |
協栄産業 | 27人 | 約30人 |
昭文社ホールディングス | 19人 | ー |
スーパーバック | 19人 | 約40人 |
シャルレ | 3人 | 定めず |
文:M&A Online編集部
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