スポーツクラブ・スイミングスクールなど「フィットネス」業界、M&Aが増加中

※この記事は公開から1年以上経っています。
alt
ナガセが買収を決めたスイミングスクールの都内店舗(東京・西五反田)

スポーツクラブ、スイミングスクールなど「フィットネス」関連のM&Aがじわり増えている。昨年は年間4件(適時開示ベース)と過去10年で最多を記録し、今年も2カ月足らずで早2件を数える。コロナ禍による利用者の減少などで経営基盤が揺らいでいることが背景にある。

「東進ハイスクール」のナガセ、スイミングスクール買収は2度目

フィットネス関連では2月に入り、M&Aが連続した。買収に乗り出したのは受験塾「東進ハイスクール」「四谷大塚」などで知られるナガセと、米国生まれの24時間ジム「エニタイムフィットネス」を国内展開するFast Fitness Japan(FFJ)だ。

ナガセはブリヂストン傘下で九州を中心にスイミングスクール19校をはじめ、テニススクールやジュニアサッカースクールを運営するブリヂストンスポーツアリーナ(福岡県久留米市)の全株式を取得し、3月末に子会社化すると発表した。

ナガセは塾・予備校のトップ企業の一つだが、実は第2の柱とするのがスイミングスクール部門。2008年に子会社化したイトマンスイミングスクール(東京都新宿区)が首都圏や関西で53校(うち直営35校)を運営する。ブリヂストンスポーツアリーナとは立地上の重複もない。

イトマンスイミングスクールといえば、数々の有力スイマーを輩出した日本水泳界の名門。昨年の東京五輪で女子200メートル、400メートル個人メドレーで金メダルに輝いた大橋悠依選手もその一人だ。

FFJは、「エニタイムフィットネス」のフランチャイズ加盟企業であるドゥワーク(東京都港区)から33店舗を9月に取得することを決めた。ドゥワークは郊外型を中心に35店舗を持つが、その大半を手放す。FFJは日本での本部機能を担い、直営店の出店とフランチャイズ方式による多店舗展開を両輪とし、総店舗数は975(直営162店、2021年12月末)。直営店舗事業の強化が狙い。

エニタイムフィットネスの店舗(東京・内神田)

コロナ禍で経営環境が一変

2021年はフィットネス関連で上場企業がかかわるM&Aは4件あった。年間877件のM&A総件数のうち、ほんのわずかとはいえ、この10年間で最も多かった(一覧表)。その前の2020年はゼロ件だったので、一気に増えた形だ。

ホームセンターのジョイフル本田は傘下のスポーツクラブ3店舗(茨城県2、千葉県1)を「ゴールドジム」を運営するTHINKフィットネス(東京都江東区)に売却した。また、ルネサンスは新ジャンルのアウトドアフィットネス事業を手がけるBEACH TOWN(横浜市)を子会社化した。屋外の開放感のある施設でヨガ、ウオーキングといった運動を楽しむため、“三密”を避けられるなどコロナ禍であっても事業拡大が期待できると判断した。

フィットネス業界はコロナ禍で事業環境が一変した。入会者の減少、会員の退会・休会の増加、利用自粛のトリプルパンチで会費収入などが大きく落ち込み、赤字転落が続出した。こうした中、生き残りをかけて合従連衡の動きも勢いづいている。

セントラルスポーツ、ルネサンスの総合スポーツクラブ上場2社の2022年3月期業績見通しをみると、コロナ前の2020年3月期に比べて売上高は8割程度、営業損益も黒字圏に戻したものの5割~4割程度の水準にとどまり、回復途上にある。

◎フィットネス関連のM&A一覧(適時開示ベース、HDはホールディングス)

2022年 ナガセ、スイミングスクール運営のブリヂストンスポーツを買収
Fast Fitness Japan、ドゥワークのエニタイムフィットネス事業(33店舗)を買収
2021年 ジョイフル本田、スポーツクラブ子会社を「ゴールドジム」のTHINKフィットネスに譲渡
ルネサンス、アウトドアフィットネスのBEACH TOWN(横浜市)を買収
アトラグループ、オンライントレーニングのOne Third Residence(東京都千代田区)を買収
テーオーHD、スポーツクラブ事業をオカモト(北海道帯広市)に譲渡
2019年 アークランドサカモト、ヴァーテックス(新潟市)からスポーツクラブ事業を買収
2018年 日新製糖、中村屋からスポーツクラブ子会社を買収
コシダカHD、女性向けフィットネスの米カーブスを買収
2017年 ジェイエスエス、宝塚スイミングスクール(兵庫県宝塚市)を吸収合併
2015年 ユニチカ、フィットネス子会社をコパン(岐阜県多治見市)に譲渡
城南進学研究社、久ヶ原スポーツクラブ(東京都大田区)を買収
2014年 日本テレビHD、ティップネスを買収
ダンロップスポーツウェルネス、キッツからスポーツクラブ子会社を買収
2013年 RIZAPグループ、スポーツアカデミーから山口県内のスポーツクラブなどを買収
2008年 コナミHD、東京電力からスポーツプレックス・ジャパンを買収
ナガセ、イトマンスイミングスクールの運営会社を買収
ルネサンス、三菱地所傘下のリーヴ・スポーツを吸収合併
コシダカHD、カーブスジャパンを子会社化

文:M&A Online編集部

関連記事はこちら
コナミ・セントラル・ルネサンス…スポーツクラブ大手の業績挽回は?

NEXT STORY

アクセスランキング

【総合】よく読まれている記事ベスト5