2019年12月のM&A件数は適時開示ベースで、前年同月と同数の77件となった。年間を通じて最多だった前月(86件)に比べて9件減ったものの、月別では4番目だった。

特筆されるのが大型M&Aがどっと集中したことだ。昭和電工が9640億円を投じて日立化成を子会社化するのをはじめ、買収金額が1000億円を超える案件は6件に上り、このうち4件が年間ランキングのトップ10に入った。

2019年全体のM&A総数は841件と4年連続で増加し、08年(870件)以来の高水準を記録した。また、年間800件台に乗せるのは09年以来10年ぶり。長期にわたる日銀の金融緩和がM&A市場の活況を後押ししている。(2019年の年間まとめは別途、後日掲載します)

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

日立、「日立化成」「画像診断事業」売却へ

12月のM&Aの総開示件数77件の内訳は買収59件、売却18件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。このうち売却については4月と8月の16件を超えて年間最多だった。また、総開示件数中、海外案件は16件(買収9件、売却7件)あった。

昭和電工は日立製作所傘下で東証1部上場の日立化成をTOB株式公開買い付け)によって完全子会社化すると発表した。2020年2月からTOB開始を予定する。最大9640億円に上る買収金額は日本企業がかかわる2019年のM&Aとして2番目の規模で、豪ビール大手を約1兆2000億円で買収するアサヒグループホールディングスの案件に次ぐ。

昭和電工の本社前(東京・芝大門)

日立化成は1962年に日立から分離独立し、日立グループでかつて日立金属、日立電線(現日立金属)と並んで“御三家”の一角をなした名門。子会社化後、昭和電工の連結売上高は1兆7000億円規模(現在約1兆円)となり、三菱ケミカルホールディングス、住友化学に続く化学業界3位に躍進する。

ヘルスケア事業の拡大を急ぐ富士フイルムホールディングスは同じく日立から画像診断関連事業を1790億円で買収することを決めた。日立が展開するCT(コンピューター断層撮影装置)や超音波診断装置などの製品群を取り込む。買収金額は2019年の年間ランキングのちょうど10位。

いすゞ、ボルボ傘下のUDトラックスを買収

これを上回るのがアステラス製薬といすゞ自動車。アステラスは米バイオ企業のオーデンテス・セラピューティクスを約3200億円で買収する。これとは別に12月中に、がん免疫治療医薬品開発の米ザイフォス・バイオサイエンシズも約130億円で子会社化。開発の進捗に応じて支払う対価を合わせると、買収金額は最大約730億円になるという。

一方、いすゞはスウェーデンの商用車大手ボルボとの業務提携に合わせ、ボルボ子会社のUDトラックス(旧日産ディーゼル工業、埼玉県上尾市)を買収することを決めた。買収金額は今後詰めるが、UDトラックスの事業価値について2500億円程度と見積もっている。

HOYA、ユニゾで“変則的”TOB

このほかに1000億円超は2件あるが、いずれも変則的ともいえる案件。一つは東芝グループの半導体製造装置メーカー、ニューフレアテクノロジーに対するHOYAのTOB計画。ニューフレアを巡っては東芝が親子上場解消を目的とするTOBを実施中(1月16日まで)で、これが不成立になった場合に、HOYAがTOBを開始する。

もう一つは不動産・ホテル業のユニゾホールディングス。従業員による買収(EBO=エンプロイー・バイアウト)を実施して非公開化すると発表した。従業員と米投資ファンドのローン・スターが出資する新会社がユニゾにTOBを行い、全株取得を目指す内容で、12月24日から買い付けが始まった。ユニゾに関しては別の米投資会社によるTOBが8月から現在も進行中だが、ユニゾはこのTOBに反対しており、対抗措置を打ち出した形だ。