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【検証】ユニゾホールディングスへのTOB価格は妥当か
ユニゾホールディングス<3258>が株式市場の注目を集めています。フォートレスのTOBも不成立の公算大。結局のところ市場が納得する買収価格はいくらなのでしょうか。非流動性ディスカウントを考慮した適正株価を算出してみましょう。
◆TOB件数(累計)は、公表ベースで9件と前年同期(12件)より3件減少となった(表1)。ただ、2014年以降の第3四半期では2016年の14件、2018年の12件に次ぐ3番目の水準だ。2019年累計は29件 で、前年同期(27件)より2件増加している。
◆総プレミアム平均は前年同期(33.39%)比8.59%ポイント増の41.98%と上昇した。ポジティブプレミアム平均も前年同期(27.03%)比14.95ポイント増の41.98%と急増した。前年同期に2件あったディスカウントプレミアム(市場価格よりもTOB価格の方が安い)案件がなかったことも影響した。
◆注目されたエイチ・アイ・エス<9603>によるユニゾホールディングス<3258>のTOB(+63.07%)とソフトバンクグループ<9984>傘下のサッポロ合同(フォートレス)によるユニゾホールディングスのTOB(+55.16%)は、いずれも不成立に終わっている。
◆表1 TOB件数の推移(届出ベース、公開買付開始日が2019年7月1日~9月30日 非上場および不成立案件含む)
◆表2 話題となったTOB
証券コード | 対象企業名 | 買付者 | 買収プレミアム | 成否 | 内容 |
---|---|---|---|---|---|
<3092> | ZOZO | Zホールディングス(旧社名:ヤフー) | +24.7% | 成立 | Zホールディングス(旧社名:ヤフー)は、衣料品通販サイト「ゾゾダウン」を運営するZOZO(売上高1184億円、営業利億256億5400万円、純資産226億5600万円)の子会社化を目的に株式公開買い付け(TOB)を実施した。ZOZO株式の50.1%を取得した。取得総額は4007億3700万円。買付価格は1株当たり2620円。前日終値2166円に対して20.96%のプレミアム、3か月平均に対して24.7%のプレミアムが付与された。 ZOZO創業者で前社長(9月12日付で取締役辞任)の前澤友作氏は36.76%を保有する株式のうち、30.37%についてTOBに応じた。ZOZOの上場(東証1部)は維持する。 ヤフーはZOZOを取り込み、ファッションカテゴリーの品揃えを強化し、インターネット通販事業を拡大する。 |
<3258> | ユニゾホールディングス |
エイチ・アイ・エス | +63.07% | 不成立 | 旅行代理店大手のエイチ・アイ・エスが、ホテルや不動産業を手がけるユニゾホールディングス(HD)に敵対的TOBを仕掛けた。買付価格は1株3100円だったが、ユニゾHDはホワイトナイトとしてソフトバンク系ファンドの米フォートレス・インベストメント・グループに救済を求めた。フォートレスのTOB買付価格は同4000円で、8月23日にエイチ・アイ・エスのTOBは不成立に終わる。 |
<3258> | ユニゾホールディングス | サッポロ合同(フォートレス) | +55.16% | 継続中 | フォートレスのTOB表明後、米ファンドのブラックストーン・グループが同5000円での買収をユニゾHDに持ちかけた。これを受けてユニゾHDはフォートレスに買付価格の引き上げを求めたが、拒否された。フォートレスは、ようやく11月15日に買付価格を同4100円へ引き上げたが、ユニゾHDは同5000円への価格引き上げを含めて協議を続けている。買付期間は11月29日まで延長されたが、ブラックストーンは同5000円でのTOBを始める方針で、市場での株価も5000円近い。フォートレスによるTOBは不成立となる可能性が極めて高そうだ。 |
◆表3 TOB件数と平均ポジティブプレミアムの推移(ディスカウントTOB、非上場および不成立案件を除く)
◆表4 TOBプレミアムの構成比(非上場および不成立案件を除く)
◆総プレミアム平均の推移(ディスカウントTOB含む。非上場および不成立案件を除く)
年 | プレミアム平均 |
---|---|
2014年 | 25.40% |
2015年 | 29.20% |
2016年 | 26.36% |
2017年 | 23.32% |
2018年 | 26.65% |
2019.1Q | 31.45% |
2019.2Q | 26.61% |
2019.3Q | 41.98% |
◆ポジティブプレミアム平均の推移(ディスカウントTOB、非上場および不成立案件を除く)
年 | ポジティブプレミアム平均 |
---|---|
2014年 | 36.70% |
2015年 | 39.90% |
2016年 | 40.85% |
2017年 | 34.90% |
2018年 | 35.76% |
2019.1Q | 35.40% |
2019.2Q | 26.61% |
2019.3Q | 41.98% |
【ご利用上の注意】
※2019年7月1日から2019年9月30日に公開買付が開始された案件を集計対象としている。ただし自社株TOBは対象外である。
※プレミアム算定に採用している株価は特に断りがない限り、公表日前3カ月平均株価(終値)としている。
※プレミアム算定に非上場企業、不成立、公開買付中の案件は含まれない。
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データ・文:M&A Online編集部
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ユニゾホールディングス<3258>が株式市場の注目を集めています。フォートレスのTOBも不成立の公算大。結局のところ市場が納得する買収価格はいくらなのでしょうか。非流動性ディスカウントを考慮した適正株価を算出してみましょう。