子会社化や事業譲渡で基本合意しながら、買収価格などの条件面で折り合わず、M&Aが中止になるケースが広がりを見せている。東証の適時開示情報をもとに調べたところ、買収中止は今年に入ってすでに6件と、昨年(3件)の倍に増えている。このほか、1月に延期を発表したまま、半年以上も協議継続中の案件もある。

年明け早々に3件の「中止」が集中

買収中止の案件は年明け早々の1月中に3件立て続けに発生した(表を参照)

横浜家系ラーメン「町田商店」などを展開するギフト、建設技術者派遣の夢真ホールディングス(HD)、調剤薬局事業に力を入れるソフィアホールディングスがそれぞれ買収計画を撤回した。

基本合意書締結後のM&A破談は昨年1年間で3件(買収案件2、売却案件1)だった。ところが、2019年はこれに1カ月で並ぶ異例の出足となった。2~3月はゼロ件だったが、4月1件、6月1件、7月1件で推移し、半年余りで計6件に達する。

2019年上期(1~6月)のM&Aは前年同期を67件上回る394件で、2009年以来10年ぶりの高水準となった。M&A件数の大幅な伸びに合わせ、中止案件もじわり増えている格好だ。

ビューティ花壇は7月18日、生花の小売りなどを手がける花門フラワーゲート(東京都中央区)の子会社化に関する基本合意書を解除したと発表した。デューデリジェンス資産査定)後、条件面などの最終的な合意に至らなかったとしている。買収価格や買収後の経営方針などをめぐって隔たりがあったとみられる。

ビューティ花壇は1月18日に基本合意書を締結し、当初、4月下旬に最終契約、5月中旬にクロージング(取引実行)を予定。その後、大型連休明けの5月7日に、最終契約を「7月中旬」に、クロージングを「7月下旬」にそれぞれ日程変更していた。

ビューティ花壇は熊本市に本社を置き、生花祭壇を中心に生花卸売り、ブライダル装花を経営の3本柱とする。一方、花門フラワーゲートは都内や横浜の国内5店舗のほか、中国・上海にも進出。ビューティ花壇は同社を傘下に取り込み、業容拡大や物流面の相互補完など業務の効率化を目指していたが、買収断念で戦略の練り直しが迫られる。

JIAはTATERU子会社の買収を白紙に

リース事業などのジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)は6月末、不動産投資コンサルティングのインベストオンライン(東京都新宿区)の買収中止を発表した。4月末に、クロージング条項に伴う協議や確認に想定以上の時間を要しているとして子会社化をいったん延期。その後も、買収後の営業展開や経営方針などについての相違点を解消できなかったという。

買収対象だったインベストオンラインの親会社はアパート施工・管理のTATERU。TATERUは融資資料改ざん問題で国土交通省から宅地建物取引業法に基づく業務停止命令(期間7月12~18日)を受けたのに加え、7月末にかけて早期退職者を募集(約160人)中。こうした経営の混乱が一連の交渉に影響した可能性がある。

4月には、アジア開発キャピタルがエンパワー(東京都新宿区)の中古ブランド品買取事業の取得を中止した。エンパワーが「大吉」ブランドで展開する直営約80店舗を取得(対象事業の売上高約62億円)する予定だったが、事業譲受の基本合意書締結から1カ月半で破談した。

◎2019年:M&Aを中止した案件(東証適時開示ベース)

発表内容
7月ビューティ花壇生花小売りの花門フラワーゲート(東京都)の子会社化を中止
6月ジャパンインベストメントアドバイザーTATERU子会社で不動産投資コンサルティングのインベストオンライン(東京都)の子会社化を中止
4月アジア開発キャピタルエンパワー(東京都)の中古ブランド品買取事業の取得を中止
1月ソフィアホールディングス調剤薬局のエムエムファーマ(山口県宇部市)の子会社化を中止
夢真ホールディングスJSC(東京都)の建設技術者派遣事業の取得を中止
ギフト家系ラーメン「せい家」展開のトップアンドフレーバー(東京都)の子会社化を中止