東証適時開示ベースで、2019年3月のM&Aは82件と、前年同月(60件)を4割近く上回った。前月比では5件増だった。1~3月期の合計は221件と前年同期比49件増加し、「令和元年」となる2019年第1コーナーのM&Aは活況を呈した。

3月はM&Aの総件数が国内案件を主体に伸びた半面、金額面では小型案件が目立った。取引金額が100億円を超える大型案件をみると、2月は7件だったのに対し、富士フイルムホールディングス(HD)による海外企業買収(990億円)の1件にとどまった。10億円超の案件は14件(買収12件、売却2件)で、前月並みだった。

富士フイルムHD、昨年に続きバイオ医薬品で大型買収

東証の適時開示は上場企業に義務付けられた「重要な会社情報の開示」のこと。このうち経営権の異動を伴うM&A案件(グループ内再編を除く)についてM&A Online編集部が集計した。

3月のM&Aの開示件数82件の内訳は買収69件、売却13件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。海外案件は12件(うち売却1件)だった。

最大案件は富士フイルムHDによる買収。米国のバイオ医薬品大手バイオジェン(マサチューセッツ州)からデンマークにある同社製造子会社を約8億9000万ドル(約990億円)で買収すると発表した。バイオジェンは神経疾患や自己免疫疾患、希少疾患を重点領域に新薬開発に取り組んでいる。買収完了は8月を予定する。

富士フイルムHDにとってバイオ医薬品分野で2年連続の大型M&A。昨年、JXTGホールディングスから米アーバイン・サイエンティフィック・セールス・カンパニー(カリフォルニア州)など2社を約850億円で傘下に収めた。

シュレッダーの明光商会は三井松島の傘下に

富士フイルムHDに次ぐのが三井松島ホールディングス。シュレッダー(自動文書裁断機)国内最大手の明光商会(東京都中央区)の株式99.79%を取得し、4月末に子会社化すると発表した。取得金額は65億円。三井松島は豪州での炭鉱事業を主力とするが、石炭相場や為替変動などの影響を受けにくい事業分野への進出を経営課題とし、近年、M&Aを活発化している。

オフィスの必需品(明光商会製)

明光商会はシュレッダーの草分け企業として1959年に設立。1989年に株式公開(店頭登録)したが、その後、2007年にMBO(経営陣が傘下する買収)で株式を非公開化した。2018年4月期業績は売上高83億円、営業利益6億3600万円。個人情報保護や情報セキュリティ-の重要性の高まりから、機密文書の処理に威力を発揮するシュレッダー需要は堅調に推移するとみられている。

毎月コンスタントに案件が発生しているのが介護・福祉関連。

大和証券グループ本社は高齢者向け住宅を運営するオリックス・リビング(東京都港区)の全株式を取得し、子会社化することを決めた。オリックス・リビングは首都圏と関西を中心に全32施設・総居室数2726室(2月末)の有料老人ホーム、高齢者向け賃貸住宅を運営する。買収額は非公表。

ソラストは、都内を中心にデイサービス事業所を53カ所運営する「なごやかケアリンク」(東京都千代田区)を13億円で子会社化すると発表した。トーカイは内藤建設(岐阜市)の福祉用具貸与・販売事業を取得する。

◎M&A:金額上位案件(10億円以上)

<買収案件>
1富士フイルムHD、米バイオ医薬品大手バイオジェンの製造子会社を買収(990億円)
2三井松島HD、シュレッダー国内最大手の明光商会(東京)を子会社化(65億円)
3十六銀行、6月営業開始の十六TT証券(岐阜市)を子会社化(54億円)
4SBIインシュアランスグループ、ペット保険の日本アニマル倶楽部(仙台市)を子会社化(37億円)
5ファーストブラザーズ、東日本不動産(青森県弘前市)を子会社化(26.5億円)
6ワールド、米国の注文シャツメーカーのオリジナルを子会社化(22.3億円)
7ウィルグループ、人材サービスの豪州u&u Holdingsを子会社化(14.4億円)
8高松コンストラクショングループ、タツミプランニング(横浜市)の戸建住宅・リフォーム事業を取得(15.7億円)
9レカム、エフティグループ傘下の東南アジア5社を子会社化(15~16億円)
10ソラスト、通所介護事業所運営のなごやかケアリンク(東京)を子会社化(13億円)
11カイカ、eラーニングのアイスタディを子会社化(12.5億円)
12ジャックス、JCBの金融機関向け個人ローン保証事業を取得(10.9億円)
<売却案件>
1プロスペクト、地下推進埋設工事の機動建設工業(大阪市)をMBOで譲渡(18.5億円)
2三谷産業、ベトナムのプリント基板製造会社を富士通に譲渡(16.5億円)