業界別M&A動向レポート[建設業界]

1・建設業界の業界分析

ゼネコンの業績は概ね好調、地域格差や人手不足が課題

建設業界は、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック関連の大型再開発が発注のピークアウトを迎えた。2018年度の建設投資は56兆6700億円の見通しとなり、2017年度と比較して1.2%の微増となった。スーパーゼネコン、準大手・中堅ゼネコンは、軒並み好決算を記録。その要因として挙げられるのが、粗利率の改善だ。

ゼネコン各社は、バブル崩壊後やリーマンショック後、工事量減少により赤字受注せざるを得なかったが、その後の景気回復や東日本大震災の復興需要で工事量が急増したため、利益率の高い案件にシフトしたことが、好業績の源泉となっている。

建設業界の課題は、都心と地方との業績格差だ。公共工事の受注は経営事項審査の点数によって受注できる工事の規模が決まる。東京オリンピック・パラリンピック関連の大型の公共事業などがあるものの、スーパーゼネコン、準大手・中堅ゼネコンに比べて点数が低くなる地方の中小企業は受注が難しく、今後も格差は縮まりそうにない。

また、人手不足も深刻化している。過酷な労働環境のイメージによる若者の入職者の減少、高齢就業者の引退により、今後も就業者数の減少が予想される。

これに対し、ゼネコン各社は労働環境の改善や機械化を進めると同時に、ITシステムの導入に取り組んでいる。そのほか、作業中の身体にかかる負担を軽減させる作業用スーツが発表され、人手不足改善に期待されている。また、政府は入管法を改正し、建設業を含む特定業種で外国人労働者の受け入れを拡大することを決定した。こうした政策も、慢性的な人手不足の改善につながると見込まれている。

2.建設業界のM&A動向

現場監督や建設業免許を得るための同一・隣接地域のM&Aが多い

建設業界では、入札できる営業エリアが限られているため、同一地域や隣接地域のM&Aが多くなる傾向がある。その中でも目立つのは、等級の高い現場監督や、500万円以上の工事を受注する際に必須となる建設業免許を獲得するために、同業の中小企業を子会社化する案件だ。異業種・隣接業種からの参入や、海外展開、事業承継を目的としたM&Aもある。

海外展開を目的とするM&Aは全般的には堅調だが、大手は慎重な姿勢を見せている。2017年度は、鹿島<1812>や大林組<1802>など多くの建設会社が海外M&Aを行った。

2018年度をみると、戸田建設<1860>が福島県内最大手の地場ゼネコンである佐藤工業(福島市)を子会社化した。一方で、建設工事業の日装建(熊本市)を子会社化した卸売業のヤマエ久野、積水化学工業から住宅用断熱ボード事業を取得した化学工業メーカーのフクビ化学<7871>など、M&Aを活用して建設業界へ参入する異業種企業も多い。

2019年度では、TOKAIホールディングス<3167>が公共土木工事に強みを持つ日産工業(岐阜市)を子会社化した。

事業承継を目的としたM&Aも増加傾向にある。今後も後継者不在の問題は続き、事業承継を目的としたM&Aは増加することが見込まれる。

文:M&A情報誌「STRIKE」 2019年 vol.32/編集:M&A Online編集部