夏の甲子園大会(第101回全国高校野球選手権大会)は連日、熱戦が続き、代表校を送り出した郷土の声援もヒートアップしている。ビジネスの世界でも今年のM&A(企業の合併・買収)件数が10年ぶりの高水準で推移し、こちらも盛り上がっている。「M&A版甲子園」と題し、M&A戦線における各都道府県の奮闘ぶりをみてみるとー。
ダントツの東京338件、大阪の4倍以上
全上場企業に義務付けられた東証適時開示のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)は今年に入って前年同期比69件増の474件(8月7日時点)。内訳は買収402件、売却72件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)で、総件数は2009年(529件)以来の多さとなっている。
では、各都道府県におけるM&A状況はどうなのか。買収・売却・ターゲット(対象先)のいずれかの立場でかかわったM&Aの件数を都道府県別に調べたところ、東京、大阪、愛知、神奈川、福岡、京都、埼玉、兵庫などの順となった。北海道は9位に食い込んだ(表を参照。都道府県をまたがるM&Aの場合、重複で件数をカウント)。
ダントツは東京の338件で、2位の大阪77件の約4.4倍に上る。買収側の上場企業が東京に集中しているのに加え、主要なターゲットとなる中堅・中小クラスの企業集積が圧倒的だからだ。業種ではIT・ソフトウエア、サービス、外食などが中心を占める。
鳥取、宮崎は2018年もM&Aと無縁
一方、買収・売却・ターゲットのいずれの立場でもM&Aにかかわる企業が今年まだゼロなのは岩手、奈良、鳥取、島根、徳島、長崎、大分、宮崎の8県。このうち鳥取県は2017年から、宮崎県は2018年からゼロが続いている。
M&Aが1件だけというのも、青森、山形、福島、和歌山、山口、高知、鹿児島の7県。青森、福島、和歌山、高知の各県はいずれも県内企業が買収のターゲットとなった。例えば、夏の甲子園大会で優勝7回を誇る野球王国・和歌山県の場合、「梅丹」「古式梅肉エキス」などで知られる1925年創業の梅専門メーカーの梅丹本舗(紀の川市)が今年5月に小林製薬の傘下に入った案件が唯一。
山口県では、東京に本社を置く上場企業が1月に県内にある調剤薬局の買収を発表したが、その後、契約解除となり、実質的にはゼロ。
ちなみに、夏の甲子園の都道府県別の優勝回数ランキングは、大阪13回を筆頭に、愛知8回、和歌山、広島、東京、兵庫、神奈川7回、愛媛6回、京都、福岡4回と続く。こうやってみると、M&A勢力図と重なるようでいて、必ずしも重ならないようだ。
◎2019年(8月7日時点):都道府県別のM&A件数=東証適時開示ベース

都道府県 | 件数 |
---|---|
北海道 | 12 |
青森 | 1 |
岩手 | 0 |
宮城 | 5 |
秋田 | 2 |
山形 | 1 |
福島 | 1 |
東京 | 338 |
神奈川 | 29 |
千葉 | 11 |
埼玉 | 14 |
茨城 | 6 |
栃木 | 3 |
群馬 | 3 |
新潟 | 4 |
山梨 | 2 |
長野 | 11 |
富山 | 3 |
石川 | 2 |
福井 | 4 |
岐阜 | 10 |
静岡 | 6 |
愛知 | 31 |
三重 | 2 |
滋賀 | 5 |
京都 | 18 |
大阪 | 77 |
兵庫 | 14 |
奈良 | 0 |
和歌山 | 1 |
鳥取 | 0 |
島根 | 0 |
岡山 | 6 |
広島 | 8 |
山口 | 1 |
徳島 | 0 |
香川 | 3 |
愛媛 | 3 |
高知 | 1 |
福岡 | 23 |
佐賀 | 2 |
長崎 | 0 |
熊本 | 4 |
大分 | 0 |
宮崎 | 0 |
鹿児島 | 1 |
沖縄 | 3 |
文:M&A Online編集部