東証「適時開示」ベースで、2019年5月のM&Aは前年同月比13件減の59件となり、昨年9月以来8カ月ぶりに前年を下回った。前月(4月)比では8件減った。ただ、2019年1~5月の累計は347件と、前年同期(295件)を50件超上回っており、高水準を維持している。

100億円超の海外M&Aはゼロに

金額トップはポータルサイト国内最大手、ヤフーの子会社化を発表したソフトバンクの4565億円で、日本企業によるM&A案件として今年最大となる。

これを含めて買収金額が100億円を超える大型M&Aは4件あったが、5月はいずれも国内企業同士の案件が占めた。海外企業をターゲットとする100億円超のM&Aがゼロとなったのは昨年6月以来ほぼ1年ぶり。

「令和」がスタートした5月のM&A件数が昨秋以来の前年同月比マイナスとなったことで、先行きを占ううえでも6月の動向が注目される。ただ、6月は全上場企業の6割以上にあたる3月期決算会社の株主総会の集中月であることから、例年、M&Aを手控える傾向があり、1年を通じて最も件数が少ない。

東証適時開示は全上場企業に義務付けられた「重要な会社情報の開示」をいい、このうち経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A online編集部が集計した。

5月のM&Aの総開示件数59件の内訳は買収53件、売却6件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。このうち海外案件は買収9件、売却2件だった。前月は中国を中心に現地子会社の売却が9件と急増したが、5月は平常月のペースに戻った形だ。

SBとヤフー 「兄弟」から「親子」に

ソフトバンクはヤフーが実施する第三者割当増資を引き受け、現在12.08%の持ち株比率を44.64%に引き上げ、役員派遣などを通じて連結子会社化(支配力基準)する。ITと金融を融合したフィンテックなど非通信分野を強化するのが狙い。

ソフトバンクの本社が入るビル(東京・東新橋)

6月末に子会社化する予定で、買収(払込)金額は4565億円。今年に入ってトップだった日本ペイントホールディングスの3005億円(同業の豪デュラックスを完全子会社化、4月に発表)を1500億円以上上回る。

ヤフーの筆頭株主は36.08%を保有するソフトバンクグループジャパン(ソフトバンクグループの100%子会社)で、これに次ぐのがソフトバンク。ソフトバンクとヤフーはこれまでの兄弟関係から親子関係に変わる。

金額2位はTOB株式公開買い付け)案件。投資ファンドのインテグラル(東京都千代田区)が化成肥料メーカー中堅の日東エフシー(東証1部、名証)に対し完全子会社化を目的にTOBを実施すると発表した。買付価格は最大約301億円。

ソニーフィナンシャルHD(東京・大手町)

ソニーフィナンシャルホールディングスは傘下のソニー生命を通じて、個人年金保険専業のソニーライフ・エイゴン生命保険(2007年設立)など合弁2社を完全子会社化する。意思決定の迅速化などが目的。オランダの保険グループであるエイゴンと折半出資していたが、50%の株式を年内にも165億円で追加取得する。

東洋紡は帝人から電子部品などに使われるポリエステルフィルム事業を手がける国内とインドネシアの内外2子会社を10月に約100億円で買収する。車両の電装化などに伴い需要が拡大するフィルム製品を取り込む。

◎M&A:金額上位案件(10億円以上)

<買収案件>
1ソフトバンク、ポータルサイト最大手のヤフーを子会社化(4565億円)
2投資ファンドのインテグラル、日東エフシーをTOBで子会社化(301億円)
3ソニーファイナンシャルHD、ソニーライフ・エイゴン生命保険など2社を子会社化(165億円)
4東洋紡、帝人からポリエステルフィルム事業を取得(約100億円)
5栗田工業、水処理薬品製造の英アビスタテクノロジーズなど2社を子会社化(94億円)
6マクニカ・富士エレHD、台湾の電子部品商社アンサー・テクノロジーを子会社化(48億円)
7住友電気工業、部材商社のテクノアソシエをTOBで子会社化(37.7億円)
8朝日放送グループHD、アニメ制作会社のディー・エル・イーを子会社化(約28億円)
9FHTホールディングス、中国の介護事業会社「上海芙勤健康管理」を子会社化(14.4億円)
10ヨシムラ・フードHD、アユ養殖の森養魚場(岐阜県大垣市)を子会社化(13.6億円)
11アルプス物流、電子機器製造の中国「兆普電子」を子会社化(13.3億円)
12ツナググループHD、求人広告制作のユメックスグループ(東京都港区)を子会社化(12.7億円)
<売却案件>
1オンキヨー、米サウンド・ユナイテッドにホームAV事業を売却(約82億円)

※HDはホールディングスの略