2019年第1四半期(1~3月期)のTOB株式公開買い付け)件数は15件で、前年同期(8件)のほぼ2倍となった。前年実績は年間42件だったのに対し、今年は第1四半期段階ながら60件ペースの高水準で滑り出した格好だ。なかでもTOBを通じたMBO(経営陣が参加する買収)は4件と、前年の年間3件をすでに上回った。

デサントへ伊藤忠が敵対的TOB

第1四半期で最大案件だったのはフランスの自動車部品大手フォルシアがクラリオンの完全子会社化を目的に実施したTOB。買収金額は約1400億円。日立製作所は保有するクラリオン株式(63.8%)を放出した。クラリオンは3月末に東証1部上場が廃止となった。

クラリオンはカーナビなど車載情報機器が主力。2006年に日立の連結子会社となったが、競争激化で苦戦が続いていた。

電炉大手の合同製鉄が同業中堅の朝日工業に行ったTOBは3月に成立し、朝日工業を完全子会社化した。買収金額は126億円。両社が主力とする建設用鋼材は販売価格の下落圧力と鉄スクラップなど主原料価格の値上げ圧力の挟み撃ちで、収益確保が厳しい状況にあり、経営統合で抜本的なコスト削減などを図る。

自動車部品のミネベアミツミは2月15日に同業のユーシンに対するTOBを実施中(4月10日まで)。買収金額は最大326億円。

敵対的TOBが大きなニュースに

世間の関心を集めたといえば、伊藤忠商事によるデサントへのTOB。デサントが反対を表明し、大手企業同士による異例の敵対的TOBに発展した。経営への関与を強めたい伊藤忠と自主独立経営を掲げる創業家出身社長が率いるデサントとの路線対立が事の発端だが、勝利したのは伊藤忠。伊藤忠は約30%だった持ち株比率を40%に引き上げ、新社長を送り込んだ。

対抗TOBで混沌とする「廣済堂MBO

経営陣が投資ファンドなどと組んで自社株式を取得するMBO絡みのTOBはオリオンビール、廣済堂、エヌ・デーソフトウェア、フーマイスターエレクトロニクスを当事者として4件。もともと非上場会社のオリオンビールを除く3社はいずれも株式の非公開化を目的としているが、その行方をめぐって予断を許さない状況となっているのが廣済堂だ。

廣済堂は米投資ファンドの米ベインキャピタルと組んで1月半ばにTOBを開始したが、その後、旧村上ファンド系企業による廣済堂株の買い占めが判明した。さらに3月下旬、その旧村上ファンド系企業が対抗TOBの開始を宣言したことで廣済堂株価の上昇に拍車がかかった。

廣済堂陣営はこれまでTOB期間を3度延長し、TOB価格を1度引き上げた。しかし、市場価格はTOB価格の1株700円を大きく上回ったままで、4月8日のTOB期間が迫る中、TOB成立が困難視されている。2日の同社株の終値は前日比12円高の819円だ。

オリオンビール、5年後に上場目指す

オリオンビール(沖縄県浦添市)に対して野村ホールディングスと米投資ファンドのカーライル・グループが共同で実施したTOBは3月下旬に成立した。MBOの一環として行われ、約570億円を投じて完全子会社化。本土のビール大手に押されて県内シェアを落としていたが、ブランド力や競争力など企業価値を高めて5年後に上場を目指している。

TOBは価格や期間、買付予定株式数などを公告したうえで、不特定株主かつ多数の株主から市場外で株式を買い付ける制度。対象会社が上場企業でなくても、有価証券報告書の提出が義務づけられている企業の場合、原則としてTOBを行わなければならない。

TOBの推移(その年にTOBが開始されたものを集計。2019年は1〜3月期)

TOB件数不成立敵対的MBO
201915014
201842013
201746215
201650005
201550006

文:M&A Online編集部