東証適時開示ベースで、2019年1~9月期のM&Aは602件と前年同期を53件上回った。2009年以来10年ぶりに600件台に乗る高水準となった。日銀による金融緩和や企業の豊富な内部留保がM&A市場の活況を後押ししている。海外企業の買収(事業を含む)も9月末時点ですでに100件を突破。人口減少などで国内市場が縮小に向かう中、M&Aをテコに海外展開を加速している様子が鮮明だ。

年間800件のハイペース

全上場企業に義務づけられた東証の適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

1~9月期のM&A開示総数602件の内訳は買収501件、売却101件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。600件を超えるのは2009年の624件以来となる。今年は10~12月の3カ月を残すが、このままのペースでいけば、年間を通じても2009年の808件に並ぶ勢いだ。

過去10年間を振り返ると、リーマン・ショック(2008年9月)に端を発した世界的な景気後退の影響で2010年は最低の年間600件台前半まで落ち込んだ。一進一退を経て、2016年以降は年間700件台が継続し、2018年は781件まで持ち直した。

豪州企業を対象に大型案件が相次ぐ

海外案件は9月末までで買収106件、売却29件の合計135件。海外の買収案件はすでに100件を超え、前年同期を20件近く上回る高水準で推移している。

国別にみると、米国関連の買収が20数件と最も多く、欧州ではドイツと英国が各7件、アジアではシンガポールが15件、これに中国、ベトナム、インド、インドネシアが7~4件で続く。

大型案件が目立ったのは豪州でのM&A。7案件中、4件が取引金額の上位20位(表を参照)にランクインした。

アサヒグループホールディングス(HD)が豪ビール大手を1兆2000億円で買収する案件は現時点で今年最大。日本ペイントホールディングスは3000億円(塗料)、日清製粉グループ本社は470億円(製粉)で、それぞれ現地大手を買収する。住友化学は700億円を投じて、豪農薬大手メーカー傘下のブラジルなど南米4子会社を取り込む。

取引金額は4兆7500億円

一方、1~9月期のM&Aの取引金額は約4兆7500億円(金額公表分を集計)。1~6月期は約2兆1600億円だったが、7~9月期はアサヒグループHDによる豪ビール大手の買収発表があったことから約2兆5900億円に膨らんだ。

前年同期の約11兆円に比べると半減以下。ただ、前年同期は武田薬品工業がアイルランド製薬大手シャイアーを6兆円以上で買収する破格の案件が含まれており、これを考慮に入れれば、金額的にも遜色はない。

日本企業同士の大型M&Aではソフトバンク関連が2位、3位を占める。ソフトバンクはヤフー(10月1日にZホールディングスに社名変更)を6月に子会社化した。そのヤフーは9月に衣料通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOの子会社化を発表し、現在、TOB株式公開買い付け)を実施中。いずれも買収金額は4000億円を超える。

 1~9月期の大型M&A一覧(HDはホールディングスの略)

取引金額:上位20件
1 アサヒグループHD、豪ビール大手カールトン&ユナイテッド・ブルワリーズ(CUB)を子会社化(約1.2兆円)
2 ソフトバンク、ポータルサイト国内最大手のヤフー(10月1日にZホールディングスに社名変更)を子会社化(4565億円)
3 ヤフー、衣料品通販サイトのZOZOをTOBで子会社化(4007億円)
4 東京センチュリー、米航空機リース大手のアビエーション・キャピタル・グループを子会社化(3213億円)
5 日本ペイントHD、豪州の塗料最大手デュラックスグループを子会社化(3005億円)
6 米フォートレス・インベストメント・グループ、ユニゾHDをTOBで子会社化(1368億円)
7 第一生命HD、米生保グレートウェストの既存契約を取得(約1300億円)
8 DIC、独化学大手BASFの顔料事業を買収(1162億円)
9 ブリヂストン、車両管理サービスの蘭トムトムテレマティクスを子会社化(1138億円)
10 日本電産、車載電装部品製造のオムロンオートモーティブエレクトロニクス(愛知県小牧市)を子会社化(約1000億円)
東海カーボン、ドイツの炭素黒鉛製品メーカーCOBEXを子会社化(約1000億円)
12 富士フイルムHD、米バイオ医薬品大手バイオジェンの製造子会社を買収(約990億円)
13 住友化学、豪農薬大手ニューファーム傘下の南米4社を子会社化(約700億円)
三菱商事、持ち分法適用関連会社の千代田化工建設を子会社化(700億円)
15 長瀬産業、米食品素材大手プリノバ・グループを子会社化(約680億円)
16 大阪ガス、米シェールガス開発会社のサビンを子会社化(約650億円)
17 三菱重工業、カナダの航空機メーカー・ボンバルディアの小型旅客機「CRJ」事業を取得(約590億円)
18 サンデンHD、流通システム事業子会社のサンデン・リテールシステム(群馬県伊勢崎市)を投資ファンドのインテグラルに譲渡(500億円)
19 凸版印刷、ドイツの建装材大手インタープリントを子会社化(約480億円)
20 日清製粉グループ本社、豪州の製粉会社アライド・ピナクルを子会社化(約470億円)
取引金額:21~50位
21 ティーケーピー、レンタルオフィスの日本リージャスホールディングス(東京都新宿区)を子会社化(429億円)
22 太陽HD、第一三共プロファーマの高槻工場を取得(376億円)
23 アサヒグループHD、英フラー・スミス&ターナーのビール・サイダー事業を取得(約374億円)
24 レンゴー、産業用重量物包装メーカーの独トライコー・パッケージング&ロジスティクスなど2社を子会社化(約323億円)
25 栗田工業、米国の水処理薬品・装置メーカーGlobal Water Services Holdingを子会社化(約301億円)
投資ファンドのインテグラル、日東エフシーをTOBで子会社化(約301億円)
27 エヌ・デーソフトウェア、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(東京都千代田区)と組んでMBO実施(299億円)
28 UACJ、銅管製造子会社のUACJ銅管(愛知県豊川市)を投資ファンドの大和PIパートナーズ(東京都千代田区)に譲渡(約240億円)
29 コーナン商事、LIXIL系の建築資材卸「建デポ」(東京都千代田区)を子会社化(239億円)
30 エア・ウォーター、米の産業ガス大手・プラクスエアからインド事業を取得(約238億円)
31 タダノ、米テレックスコーポレーション傘下の「Demag」ブランドのクレーン事業を買収(約236億円)
32 リログループ、カナダのリロケーション大手ブルックフィールドRPSを子会社化(約230億円)
33 エア・ウォーター、産業ガス大手の独リンデからインド事業を取得(約204億円)
34 ソニーフィナンシャルHD、ソニーライフ・エイゴン生命保険など2社を子会社化(165億円)
35 大正製薬HD、ベトナムの医薬品会社ハウザン製薬を子会社化(約160億円)
36 米ベインキャピタル、印刷業の廣済堂をTOBで子会社化(約152億円、ただし不成立に
37 大建工業、伊藤忠商事傘下のカナダ・米の木質系建材会社2社を子会社化(約130億円)
38 ルックHD、イタリアの革製品ブランド「イルビゾンテ」を子会社化(約109億円)
39 バンドー化学、整形外科向け医療機器メーカーのAimedic MMT(東京都港区)を子会社化(105億円)
40 ネクソン、スウェーデンのゲーム開発スタジオEmbark Studiosを子会社化(約104億円)
41 東洋紡、帝人からポリエステルフィルム事業を取得(約100億円)
42 ヤマハ発動機、半導体用ボンディング装置メーカーの新川を子会社化(100億円)
43 栗田工業、水処理薬品製造の英アビスタテクノロジーズなど2社を子会社化(94.3億円)
44 ワコールHD、米の女性インナーウエア企画販売会社Intimates Onlineを子会社化(91.8億円)
45 ノジマ、シンガポールの家電・家具小売りCourts Asiaを子会社化(約88億円)
46 ヤマエ久野、住宅資材製造大手のハイビック(栃木県小山市)を傘下に持つHVCホールディングス(東京都千代田区)を子会社化(85.5億円)
47 オンキヨー、米サウンド・ユナイテッドにホームAV事業を譲渡(81.7億円、ただし中止に
48 クリエイト・レストランツ・HD、米イタリアンレストラン「イルフォルナイオ」を子会社化(80.5億円)
49 丸全昭和運輸、港湾運送の国際埠頭(横浜市)を子会社化(74億円)
50 国際紙パルプ商事、紙・包装資材卸の豪Spicersを子会社化(73.8億円)

文:M&A Online編集部