2019年第1四半期(1-3月)の国内株式TOBの概況
2019年第1四半期に公表された国内株式を対象とするTOBは15件でした。直前四半期の公表件数は1つの対象会社に対する2段階TOBをまとめて1件とカウントして実質13件、前年同期の公表件数は8件でしたので、TOB市場は前年同期比ではやや活性化し、直前四半期からは横ばいで、一定の活況を維持した状況にあります。
15件のうち、2件が親子上場会社における上場子会社の非上場化を目的として実施したものでした。また、上場子会社を他社に売却するものが1件ありました。他方、上場を維持する連結子会社化を目的としたものが1件あり、全体として親子上場数は2社の減少となりました。
また、市場の注目を大きく集めた取引として、ベインキャピタルをスポンサーとする廣済堂<7868>のMBOを目的としたTOBと、それに対抗する村上ファンド系の南青山不動産によるTOBが実施されましたが、いずれも不成立に終わっています。
他に大きく注目された取引に、伊藤忠商事<8001>によるデサント<8114>を対象とする敵対的TOBが実施され、こちらは目論見通りの成立となっています。
その他、MBOが上記の廣済堂の案件以外に2件、ファンドによるバイアウトが廣済堂案件以外に1件、スクイズアウトを伴う上場会社によるバイアウトが2件、持分法適用会社化を目的とした事業会社によるTOBが1件、非上場連結子会社の持ち分買い増しのためのTOBが1件、筆頭株主の持ち分売却のためのマイナスプレミアムによる形式的TOBが1件ありました。
図1 親会社による上場子会社の完全子会社化
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
SCSK | べリザーブ | 28.65% |
SCSK | JIEC | 40.52% |
(筆者作成)
図2 上場子会社の売却
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
フォルシアグループ | クラリオン(*) | 0.81% |
(*)クラリオンは日立製作所<6501>の上場子会社であった。
(筆者作成)
図3 上場を維持する子会社化
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
NTTデータ | ネットイヤーグループ | 98.60% |
(筆者作成)
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
ベインキャピタル | 廣済堂 | NA(不成立) |
南青山不動産(対抗) | 廣済堂 | NA(不成立) |
ジェイ・ケイ・イー | エヌ・デーソフトウェア | 33.12% |
TMK | フーマイスターエレクトロニクス | 43.55% |
(筆者作成)
図5 敵対的TOB(持分法の枠内での影響力強化)
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
伊藤忠商事 | デサント | 30.6% |
(筆者作成)
図6 ファンドによるバイアウト
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
オーシャンホールディングス | オリオンビール | NA(非上場) |
(筆者作成)
図7 事業会社によるバイアウト
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
合同製鐵 | 朝日工業 | 1.07% |
ミネベアミツミ | ユーシン | 0.31% |
(筆者作成)
図8 上場持分法適用会社化
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
ビーエムアイ・ホスピタリティ・サービス・リミテッド | ジェクシード | 47.06% |
(筆者作成)
図9 非上場連結子会社の持ち分買い増し
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
---|---|---|
エイチ・アイ・エス | 九州産業交通HD | NA(非上場) |
(筆者作成)
図10 形式的TOB(実質的相対取引)
買付企業 | 対象企業 | TOBプレミアム |
カイカ | アイスタディ | -12.01% |
(筆者作成)