東証適時開示ベースで、6月のM&Aは前年同月を15件上回る47件となった。前月(5月)に比べ12件減った。6月は上場企業の株主総会の集中月であることから、例年、M&Aを手控える傾向があり、1年を通じて最も件数が少ないが、過去10年間では2012年52件、2011年50件に次ぐ3番目の高水準だった。(1~6月の上期まとめは後日掲載

金額トップは東海カーボンで、ドイツの炭素黒鉛製品メーカー大手COBEX HoldCoを約1000億円で買収すると発表した。これを筆頭に100億円を超える大型買収は6件あったが、いずれも海外案件が占めた。ルックホールディングスはイタリア発の世界的な革製品ブランドで日本でもファンが多い「イルビゾンテ」を109億円で傘下に収めることになり、話題を集めた。

日本企業同士のM&AではUACJが銅管製造子会社のUACJ銅管(愛知県豊川市)を国内投資ファンドに約240億円で譲渡する案件が最大だった。

100億円超の買収6件、いずれも海外案件

全上場企業に義務づけられた東証適時開示のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A online編集部が集計した。

6月のM&Aの総開示件数47件の内訳は買収39件、売却8件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。このうち海外案件は買収7件、売却4件だった。昨年6月は海外企業をターゲットする100億円超の買収がゼロだったが、今年6月は一転、海外の買収案件7件中、6件がいずれも100億円を超えた。

長瀬産業、米の食品素材大手を680億円で傘下

東海カーボンが約1000億円を投じて買収するドイツCOBEXはアルミ精錬用電極、高炉の内張り用ライニング(高炉用ブロック)、金属シリコンなどの精錬に使う炭素電極の3分野で世界有数とされ、ポーランドに2工場を持つ。なかでも主力のアルミ精錬用電極は自動車や航空機の軽量化ニーズでアルミ需要が拡大し、安定的な伸びが見込まれている。

買収金額1000億円は2019年に入って、日本企業がかかわるM&Aとして5番目にランクされる(首位はソフトバンクによるヤフーの子会社化、4565億円。5月発表)。東海カーボンは鉄のスクラップを電炉で溶かす際に使う黒鉛電極の世界的大手だが、アルミ精錬用電極を取り込むことで新たな収益源に育てる。

金額2位は長瀬産業。米の食品素材大手、プリノバ・グループの株式約94%を680億円で買収すると発表した。プリノバはビタミンC、ビタミンBやアミノ酸の調合・配合で世界トップクラスに位置し、2018年12月期の売上高は841億円。7月上旬に買収完了の予定。

長瀬産業は2012年にバイオ企業で食品素材に強みを持つ林原(岡山市)を700億円で完全子会社化した。林原との連携を進め、日本、アジア、欧米での事業拡大を目指す。

ボンバルディアの事業を取り込む三菱重工

3位は三菱重工業。カナダの航空機メーカー、ボンバルディアの小型旅客機「CRJ」事業を約590億円で買収する。CRJは座席数50~100席で、その保守・顧客サポート、改修、販売、型式証明などを取得する内容。ボンバルディアの顧客基盤や整備・補修拠点(カナダ、米各2カ所)を引き継ぐ。

2019年末から2020年上期の買収完了を見込む。三菱重工は子会社の三菱航空機が2020年半ばに国産ジェット「スペースジェット(旧MRJ)」の初納入を目指している。ボンバルディアの事業を取り込み、航空機事業の基盤強化をつなげる。

三菱重工業の本社(東京・丸の内)

凸版印刷は建装材用化粧シートメーカーの独インタープリントを480億円、エア・ウォーターは米プラクスエアからインドでの産業ガス事業の238億円でそれぞれ傘下に収める。

レディース衣料中堅のルックホールディングスはイタリアの革製品ブランド「イルビゾンテ」を世界展開するイルビゾンテ・イタリア・ホールディングス(ミラノ)を完全子会社すると発表した。日本企業が世界的な主要ブランドを買収するのは珍しいケース。

ルックは1999年に「イルビゾンテ」の独占輸入販売権を取得し、全国41店舗を展開する。現在では「イルビゾンテ」事業が同社最大の収益事業に成長しているという。

◎M&A:金額上位案件(10億円以上)

<買収案件>
1東海カーボン、ドイツの炭素黒鉛製品メーカーCOBEX HoldCoを子会社化(1000億円)
2長瀬産業、米食品素材大手プリノバ・グループを子会社化(680億円)
3三菱重工業、カナダ・ボンバルディアの小型旅客機「CRJ」事業を取得(約590億円)
4凸版印刷、建装材用化粧シートメーカーの独インタープリントを子会社化(480億円)
5エア・ウォーター、米プラクスエアからインドでの産業ガス事業を取得(238億円)
6ルックホールディングス、イタリアの革製品ブランド「イルビゾンテ」を子会社化(109億円)
7クリエイト・レストランツ・ホールディングス、西洋フード・コンパスグループ(東京都中央区)からレストラン運営事業の一部を取得(58.8億円)
8UEX、特殊鋼商社の住商特殊鋼(東京都千代田区)を子会社化(29.1億円)
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PKSHA Technology、駐車場機器メーカーのアイドラ(東京都新宿区)を子会社化(約28億円)
 <売却案件>
1UACJ、UACJ銅管(愛知県豊川市)を豊川ホールディングス(東京都港区)に譲渡(約240億円)
2東テク、太陽光発電子会社のケーピーエネルギー(東京都千代田区)を日本再生可能エネルギー(東京都港区)に譲渡(39.1億円)