中国進出の日本企業の間で現地子会社を売却する動きが広がっている。1~3月は各月1件だったが、4月だけですでに5件に上る(適時開示ベース)。人件費上昇や人民元高など競争力低下に伴う収益悪化が主因だ。業種で目立つのが繊維関連の“糸へん“企業で、今年の全8件中、4件を占める。

繊維関連を中心に人件費高騰が重荷に

中国子会社の売却は4月に入って一気に加速し、5件と跳ね上がった。親会社の顔ぶれを見ると、TSIホールディングス(レディースアパレル)、ヤマト インターナショナル(アパレル)、タマホーム(注文住宅)、KTC(作業用工具)、日東紡(繊維)。

TSIホールディングスは服装・服飾子会社の北京子苞米時装有限公司(北京)の全出資持分を現地企業に譲渡することを決めた。譲渡金額は1億6600万円。不振事業の構造改革の一環。北京子苞米時装は1996年に設立し、20年を超える業歴を持つが、近年、赤字経営が続いていた。2018年12月期の当期純損益は9億4200万円。

同じくアパレルのヤマト インターナショナルは、繊維製品・雑貨の輸出入を手がける信寶實業有限公司(香港)の全株式を地元企業に譲渡する。信寶實業は上海にシャツ、アウター、パンツなどの生産子会社(1994年に設立)を持つ。譲渡額は約6億円。

タマホームは内装工事子会社の玉之家環境技術有限公司(天津)を売却を発表した。赤字が常態化していた。譲渡額は非公表。

KTCは1995年に設立した福清京達師工具有限公司(福建省)の全出資持分(所有割合75%)を譲渡する。OEM(相手先ブランド) 品を主体に自動車など産業用作業工具を生産していたが、市場環境の変化によるOEM 需要の減少に加え、設備の老朽化や生産コスト上昇などで競争力の維持と収益確保が困難になっていた。譲渡額は2億9500万円。

日東紡は、織物など染色整理加工や芯地製品を製造する繊維子会社の日東紡有限公司(江蘇省)を現地企業に譲渡する。同子会社は1997年に創業。しかし、近年は人件費高騰や環境規制強化に伴うコスト上昇、円安人民高の進行などで競争力が低下し、業績低迷していた。譲渡額は非公表。

海外子会社の売却13件中、8件が中国

適時開示をもとに集計したところ、2019年1月以降の海外子会社の売却案件は13件。国別では中国8件のほか、韓国、ベトナム、インド、ノルウェー、メキシコが各1件となっている。

1月には、ニッケが毛糸製造の江陰日毛紡績有限公司(江蘇省。1993年設立)の譲渡を決めており、繊維関連が全8件中、半数の4件を占める。ニッケは価格競争が激しい汎用糸を縮小し、高付加価値の特殊糸にシフトを強めるのが狙い。主要因はやはり人件費の高騰だ。

中国は2001年のWTO(世界貿易機関)加盟で「世界の工場」として注目され、先進各国企業がこぞって進出。2010年にはGDP(国内総生産)世界第2位に躍進した。ただ、急激な経済成長で人件費が高騰し、進出企業にとっては収益確保が年々厳しさを増している。

3月末、ダスキンが中国・上海で展開するドーナッツ店「ミスタードーナッツ」の全10店舗を閉鎖したのも、ファストフード間の競争激化に加え、賃料や人件費などのコスト上昇による採算悪化が引き金となった。

◎2019年:中国子会社の売却(4月19日時点)

<1月>
ニッケ江陰日毛紡績有限公司(江蘇省)毛糸製造
<2月>
新田ゼラチンニッタホンコン(香港)コラーゲン製品
<3月>
ウッドワン住建有限公司(上海)木質建材製造
<4月>
TSIホールディングス北京子苞米時装有限公司(北京)
服装・服飾製造
タマホーム王之家環境技術有限公司(天津)内装工事
ヤマト インターナショナル信寶實業有限公司(香港)繊維製品輸出入
KTC福清京達師工具有限公司(福建省)
作業用工具製造
日東紡日東紡有限公司(江蘇省)繊維事業

文:M&A online編集部