2019年に希望(早期)退職者の募集を発表した上場企業は30社を突破した。M&A Online編集部が調べたところ、少なくとも32社(会社側が正式発表していない、報道ベースのものは除く)に上り、前年のほぼ3倍に急増した。削減規模も実施済みと計画中を合わせて8000人を超える。

不振事業からの撤退など経営立て直しに伴い固定費削減に迫られるケースが大半だが、業績が堅調なうちに人員体制の適正化に向けて幹部社員層のスリム化に取り組む企業も少なくない。

オンワード、40歳以上で350人を募集

衣料品大手のオンワードホールディングスは2020年1月7日、希望退職者の募集を始めた。対象者は40歳以上の勤続3年以上の社員(販売職は除く)。募集人員は350人程度で、全従業員の約7%にあたる。募集は1月30日まで。退職日は2月29日。応募者には規定の額に特別退職金を上乗せする。

オンワードは「23区」「組曲」「J.プレス」などの有力ブランドを展開するが、主力販路の百貨店での売り上げ不振などで業績が悪化。昨年10月に不採算店舗の閉鎖や一部ブランドの廃止を柱とする事業構造改革を発表した。店舗閉鎖は国内外約3000店のうち数百店規模が想定されている。これに連動する形で、昨年12月初めに希望退職者の募集を打ち出していた。

同社の2020年2月期決算は240億円の最終赤字(前期は49億円の黒字)に転落する見込みだが、希望退職者募集の関連費用が含まれていないため、最終的に赤字幅は拡大する見通しだ。

12月にはもう1社、缶コーヒーなど飲料大手のダイドーグループホールディングスが希望退職者を50人程度募ると発表した。「ライフシフト支援施策」と銘打ち、中核子会社のダイドードリンコで53~64歳、ダイドービバレッジサービスで55~64歳の社員を対象とする。募集期間は1月10日~24日。

ダイドーは飲料売上の大部分を自販機販売に依存しているが、競争激化で業績には停滞感が強まっている。世代交代による組織の活性化を促す狙いがあり、一方で20~40歳代の営業経験者を中心に100人規模の新規採用を計画。

削減数は9000人突破の可能性も

2019年に各社が発表した希望退職者募集の人員は合計約8000人(募集中や予定を含む)。LIXILグループは2月に人数の枠を定めずに募集するほか、日立金属は詳細が非公表ながら3月末退職で募集を予定しており、従業員規模が大きい両社を加えれば、9000人を突破する可能性がある。

また、キリンホールディングスのように正式発表していないものの、希望退職者募集(2019年10~11月)が報道されたケースを含めると、さらに人数が膨らむ計算だ。

会社別で削減数が最大となったのは経営再建中の中小型液晶パネル大手、ジャパンディスプレイの1266人(募集1200人)。コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは700人程度募集したところ、予定数を3割以上上回る950人が応募した。

全社員に占める割合が最も高いのは約600人を募集するノーリツ。同社は不採算の住設システム分野(キッチン、バスなど)からの生産撤退に伴い、全社員の2割近くを削減する。

全32社中、削減人員が100人を超えるのは19社。このうち、衣料品大手のレナウンは10月に150人程度で募集を予定していたが、市場環境の変化を理由に計画をいったん中止。同社は計画を練り直したうえで、再度募集に踏み切る見通し。

日立金属が本社を置くビル(中央の奥、東京・品川)

カシオ、協和キリン、味の素…「攻め一手」に

攻めの一手として希望退職者募集に取り組んだのはカシオ計算機、鳥居薬品、協和キリン、中外製薬など。いずれも足元の業績が悪化しているわけではなく、人数を定めず募集した。

年明けから募集を始めた味の素や2月のファミリーマートも同様だ。味の素は50歳以上の管理職を対象に100人程度を募集するが、狙いは世代交代の促進。対象とする50歳以上の管理職は約800人と全社員の4人に1人に相当するという。ファミマが募集する約800人は全社員の約1割にあたり、コンビニ業界を取り巻く厳しい環境を勝ち抜くために、先んじて本部組織のスリム化・効率化を進める。

米イラン関係の緊迫化や米中経済摩擦などを背景に世界経済に不透明感が広がっているのに加え、国内景気も東京オリンピック・パラリンピック後の後退が懸念される中、2020年も人員削減圧力が高まることが予想される。

◎2019年に希望(早期)退職者募集を発表した企業

発表月社名募集規模と応募人数
12オンワードHD350人程度(2020年1月7日~1月30日)
ダイドーグループHD50人程度(2020年1月10日~1月24日)
11日本電波工業約100人→129人応募
オンキヨー約100人→98人応募
ファミリーマート約800人(2020年2月までに募集)
LIXILグループ定めず(2020年2月17日~28日)
ノーリツ約600人(2020年1月17日~31日)
味の素100人程度(2020年1月6日~3月13日)
10サンデンHD200人程度→215人応募
スペースシャワーネットワーク15人程度→22人応募
日立金属2020年3月末退職で実施予定
9中村超硬60人程度(10月1日~11日に実施)
クボテック定めず(10月7日~16日)→1人応募
藤久30人程度(11月1日~20日に実施)
8ヤマハモーターロボティクスHD 70人程度(傘下の新川など2社)→73人応募
レナウン150人程度(10月上旬予定)→募集中止
アサヒ衛陶約15人→18人応募
7TATERU160人程度→136人応募
キョウデン定めず→129人応募
富士通フロンテック100人程度→159人応募
6ジャパンディスプレイ1200人→1266人応募
5Aiming40人程度→51人応募
東芝約350人(システムLSI事業子会社の東芝デバイス&ストレージで)→414人応募
4中外製薬定めず→172人応募
3メガチップス40人程度→42人応募
2協和キリン定めず→296人応募
鳥居薬品定めず→281人応募
ルネサスエレクトロニクス900人程度(推定)
コカ・コーラボトラーズジャパンHD700人程度→950人応募
1アルペン300人程度→355人応募
光村印刷30人程度→子会社の新村印刷で実施済み
カシオ計算機定めず→156人応募

※HDはホールディングスの略。

文:M&A Online編集部