M&A案件の“破談”が10月だけで4件と急続している。大日本住友製薬、日本ペイントホールディングス(HD)、ファイズホールディングス(HD)は企業買収を、オンキヨーは事業売却をそれぞれ取りやめた。今年に入り、M&Aが中止に追い込まれるケースは10件を突破し、1ケタ台だった昨年(3件)を大きく上回る。

大日本住友、日本ペイントは外国企業の買収をストップ

大日本住友製薬は10月17日、豪州の再生・細胞医薬品企業サイナート・セラピューティクス(本社メルボルン)への買収提案を取り下げたと発表した。iPS細胞を応用した医薬品開発など再生医療分野を強化するのが目的だったが、買収条件について合意に至らなかったとしている。

大日本住友がサイナートへの買収提案を公表したのは7月。その際、買収価格について1株あたり2豪ドルで、全株式を取得することを明らかにしていた。

日本ペイントHDはほぼ1年前の2018年11月に合意していた中国・上海の工業用塗料メーカー2社の買収を中止した。上海麦加塗料有限公司と麦加塗料南通有限公司の株式70%を取得し、傘下に収めることで基本合意していた。コンテナ用塗料と風力発電用塗料の分野で中国市場に本格参入を狙ったが、「当初期待した収益成長が難しい」と判断した。

その同社はある“過去”を持つ。2017年11月に、米塗料大手のアクサルタ・コーティング・システムズに1兆円規模の買収を提案したものの、10日後に交渉中止の発表に追い込まれた苦い経験があるのだ。もっとも積極的なM&A路線に変わりはなく、今年8月には豪の同業大手、デュラックス・グループを約3000億円で買収を完了した。

東京都品川区内の事業所

また、ファイズHDは10月9日、運送業のドラゴン・ホールディングス(愛知県大府市)の子会社化(同日付で株式51%を取得)に関する基本合意書を解除したと発表した。ファイズはネット通販事業者向けの庫内作業代行を主力とし、中部地区での物流サービス強化を目指していた。取得金額は基本合意段階で6億1200万円とされていた。しかし、株式取得の諸条件について最終的に折り合わなかったという。

オンキヨー、ホームAV事業の売却中止で再建に暗雲

一方、オンキヨーは米同業大手、サウンド・ユナイテッド(カリフォルニア州)とその持ち株会社に対するホームAV(音響・映像)事業の売却を中止した。同事業の売却については6月の株主総会で承認されているが、契約の有効期限である11月末までに売却が完了するメドが立たないことから、「互いに契約に拘束されることは得策ではない」と判断した。

オンキヨーは5月にホームAV事業の売却を発表。その際の売却金額は7500万ドル(約82億円)となっていたが、関連するすべての契約の締結、資金調達の確保を含め、条件達成が互いに難航したという。

ただ、もとをただせば、本来、今回のホームAV事業売却はオンキヨーの経営再建の要(かなめ)だったはず。全売上高の6割以上を占める主力事業を切り離し、ヘッドホンなどのデジタルライフ事業とOEM(相手先ブランド生産)事業の2部門に経営資源を集中して企業再生を図ることにしていたが、目算が完全に外れる。今後、他社との提携を模索し、財務の健全化や経営合理化の検討を進める。

今年すでに10件超え

東証の適時開示情報をもとに調べたところ、今年1月以降のM&A中止は11件。10月に4件発生したことで、一気に2ケタを超えた。昨年は年間3件に過ぎず、激増ぶりが際立つ。

中止案件のほか、M&Aの延期もある。商品先物取引業のフジトミは9月末、傘下のふくろう少額短期保険(東京都)の売却を延期。くふうカンパニーに対し、9月中に全株式を譲渡する予定だった。しかし、関東財務局の承認が当初見込み以上に期間を要するとして、譲渡時期を「未定」に変更した。

◎2019年:M&Aを中止した案件(東証適時開示ベース)

発表会社名内容
10月オンキヨー米サウンド・ユナイテッドへのホームAV事業の売却を中止
日本ペイントHD中国の工業用塗料メーカー2社の買収を中止
ファイズHD運送業のドラゴン・ホールディングス(愛知県大府市)の子会社化を中止
大日本住友製薬豪バイオ企業サイナータ・セラピューティクスへの買収提案を取り下げ
7月ビューティ花壇生花小売りの花門フラワーゲート(東京都)の子会社化を中止
6月ジャパンインベストメントアドバイザーTATERU子会社で不動産投資コンサルティングのインベストオンライン(東京都)の子会社化を中止
FHTホールディングスコマネチ(東京都)に対する太陽光発電所5カ所の譲渡契約を解除
4月アジア開発キャピタルエンパワー(東京都)の中古ブランド品買取事業の取得を中止
1月ソフィアHD調剤薬局のエムエムファーマ(山口県宇部市)の子会社化を中止
夢真HDJSC(東京都)の建設技術者派遣事業の取得を中止
ギフト家系ラーメン「せい家」展開のトップアンドフレーバー(東京都)の子会社化を中止

※HDはホールディングス

文:M&A Online編集部