2019年の小売業界で注目のM&Aといえば、衣料品通販サイト最大手のZOZOをターゲットとしたヤフー(現Zホールディングス)の子会社化が真っ先に思い浮かぶはずだ。ヤフーはTOB株式公開買い付け)を通じてZOZO株式の50.1%を取得し、傘下に収めた。買収金額は4007億円に上り、日本企業が取り組んだM&Aとして今年4位にランクされる。

ZOZO買収ほどでないにせよ、今年も小売業界ではさまざまなM&Aが繰り広げられた。全上場企業に義務づけられた適時開示情報をもとに、百貨店・スーパー、コンビニ、専門量販店(家電、ホームセンター、ドラッグストアなど)をはじめ、業態別に主な案件を振り返る。

地方のスーパーでM&Aが広がる

百貨店・スーパーでは地方での動きが目立つ。高島屋は業績が低迷していた米子高島屋(鳥取県米子市。2003年設立)の経営から撤退し、地元企業に全株式を譲渡することを決めた。

一方、スーパーの買収は宮城、埼玉、富山、長崎の4県で5件(埼玉2件)あった。北海道と青森、岩手を地盤とする地域最大手のアークスは食品スーパー9店舗を展開する伊藤チェーン(宮城県柴田町)をグループに迎えた。地場中小スーパーはコンビニやドラッグストアとの競争激化で経営環境が厳しさを増し、否応なく再編の波に直面しているのが実情だ。

コンビニをめぐっては、昨年は伊藤忠商事がユニー・ファミリーマートホールディングス(現ファミリーマート)を子会社化する大型案件があったが、今年は“無風”状態。

ヤマダ電機、大塚家具を子会社化

家電量販店トップのヤマダ電機は経営再建中の大塚家具を子会社化することになった。約44億円で第三者割当増資を引き受け、約52%の株式を取得する。ヤマダ電機はリフォームやインテリアなどの住宅関連の売り場を充実した「家電住まいる館」の展開に力を入れている。大塚家具とは今年2月に業務提携していたが、次のステップとして子会社化に踏み込む。

ヤマダ電機の傘下に入る大塚家具(東京・新宿のショールーム)

ノジマはシンガポールの家電・家具小売り会社を88億円で買収したが、それ以上に注目を集めたのが再建途上にあるスルガ銀行の筆頭株主になったこと。約140億円を投じて、5%程度だった持ち株比率を一気に18.5%に高めた。

“東上作戦”を本格化するコーナン

ZOZOの一件を別として、買い手として小売業界で今年最も大きいM&Aを手がけたのは関西地盤のホームセンター大手のコーナン商事だ。LIXILグループ系の建築資材卸売り「建デポ」を運営する建デポ(東京都千代田区)を239億円で子会社化した。首都圏での事業基盤拡充が目的で、同社にとっても過去最大のM&Aとなった。

さらに11月には、ドイト(さいたま市)からホームセンターなど15店舗を68億円で取得することを決めた。M&Aによる“東上作戦”の本格化を印象づける1年となった。

ドラッグストアでは8月、業界5位のマツモトキヨシホールディングスと7位のココカラファインが経営統合に向けた協議を始めると発表した。実現すれば、売上規模は1兆円となり、ツルハホールディングスを抜き、業界トップに躍進する。ただ、早期の基本合意を目指すとしていたものの、その後、具体的な進展は見られていない。

◎2019年 百貨店・スーパーの主なM&A

発表月内容
1月 バローHD、食品スーパー「サンコー」運営の三幸(富山県高岡市)を子会社化
3月 ジャパンミート、スーパー13店運営のタジマ(埼玉県越谷市)を子会社化
5月 アークス、食品スーパーの伊藤チェーン(宮城県柴田町)を子会社化
8月 穴吹興産、ママのセンター(長崎県長与町)のスーパー事業(4店)を取得
10月 高島屋、米子高島屋をジョイアーバン(鳥取県米子市)に譲渡
11月 エコス、食品スーパー15店運営の与野フードセンター(さいたま市)を子会社化

◎2019年 家電量販店の主なM&A

発表月内容
1月 ノジマ、家電・家具小売りのシンガポールCourts Asiaを子会社化
9月 ビックカメラ、子会社のソフマップが文教堂グループHDのアニメキャラクターグッズ販売事業を取得
12月 ヤマダ電機、経営再建中の大塚家具を子会社化

◎2019年 ホームセンター、ドラッグストア・調剤薬局の主なM&A

発表月内容
4月 コーナン商事、会員制建築資材卸売の建デポを子会社化
8月 マツモトキヨシHD、ココカラファンが経営統合の協議開始で覚書調印
10月 ウエルシアHD、ドラッグストア24店運営のよどや(高知市)を子会社化
アインHD、エステティクス(東京都港区)のメイクアップコスメブランド「DAZZSHOP」を取得
11月 コーナン商事、パン・パシフィック・インターナショナル傘下のホームセンター「ドイト」の事業を取得

(社名のHDはホールディングスの略)
M&A Online編集部作成