12月のM&A市場は「売り」ががぜん勢いづいた。上場企業による子会社や事業の売却は18件に上り、年間最多となった。なかでも年末休み前の最終週(23~27日)だけで12件の「売り」が集中。売却対象となった子会社や事業の多くは不振状態にあり、“年末大決算”の様相を呈した。

M&A、売却サイドの積極活用が浮き彫りに

上場企業に義務づけられた「適時開示情報」をもとに、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。それによると、12月のM&Aの総開示件数は77 件で、内訳は買収59件、売却18件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。

このうち、売却18件は昨年8月と並ぶ高水準で、今年では4月と8月の16件を超えて最多だった。M&Aといえば、買収が注目されがちだが、事業構成の組み替えや非中核事業の切り出しを目的として売却サイドからも積極活用されていることが改めて浮き彫りになった形だ。

米子会社を切り離したサッポロ、楽天、新田ゼラチン

最も多かったのは海外関連で、7件あった。

サッポロホールディングスは米国で飲料事業を統括する持ち株会社カントリーピュアフーズの全保有株式(所有割合51%)を、米投資会社BPCF CPF Holdingsに約40億円で譲渡した。サッポロは2012年に米の果汁飲料市場に参入したが、苦戦が続いていた。今後、米市場ではビールなど酒類事業に経営資源を集中する方針だ。

米国では、楽天が電子書籍やオーディオブックなどの配信サービスを手がける子会社オーバードライブ・ホールディングスを現地投資会社に2020年1月末に譲渡することを決めた。経営資源の適正配分が理由。新田ゼラチンは、債務超過状態だったコラーゲンケーシング(ソーセージなどの表皮に使われる)の米製造子会社を同業の米メーカーに売却した。

このほか、日本ヒューム、JALUXはタイ子会社、コマニー、北越コーポレーションは中国子会社をそれぞれ手放すことにした。

小僧寿し、サ高住事業から撤退し本業に集中

国内では、経営再建中の三井E&Sホールディングスがプラント子会社をJFEエンジニアリング(東京都千代田区)に来年3月末に譲渡することを発表した。三井E&Sは子会社などの資産売却や1000人規模の削減・配置転換を柱とする事業構造改革を推進中。

小僧寿しはサービス付き高齢者住宅の運営を手がける子会社を、業務用食品商社の東洋商事(東京都中央区)に12月26日付で譲渡した。2016年に介護・福祉分野に参入したが、中核事業である持ち帰り寿司とデリバリー(宅配)に専念するのが狙いだ。

安楽亭・吉野家で大型案件が成立

外食関連では、安楽亭が吉野家ホールディングス子会社でステーキレストラン「フォルクス」「ステーキのどん」など158店舗を展開するアークミール(東京都中央区)を2020年2月中に傘下に収める。この案件は集計上、買収としてカウントしているが、吉野家側からすれば大型の売却案件。ただし、買収(売却)金額は非公開。

安楽亭は、吉野家HDからステーキレストラン「フォルクス」など運営のアークミールを買収へ(東京・日比谷の店舗)

宇部興産は、子会社が経営する名門ゴルフ場「宇部72カントリークラブ」(山口市)の売却を決めた。ゴルフ場の売却は今年に入って、日神不動産による平川カントリークラブ(千葉市)、平和によるレイクウッドゴルフクラブ富岡コース(群馬県富岡市)に続く3件目。

◎2019年12月:売却案件一覧(適時開示ベース)

売却企業売却対象の子会社・事業
日本ヒュームタイ子会社(コンクリート製品)
ヘリオス テクノ  HD日本技術センター(人材サービス)
フリークアウト・HDGardia(金融保証業務)
新田ゼラチン米子会社(コラーゲンケーシング製造)
宇部興産宇部72カントリークラブ(ゴルフ場)
スペースシャワーネットワークPヴァイン(音楽ソフト企画・制作)
コマニー中国子会社(間仕切り製造)
JALUXタイ子会社(農産物加工輸出)
三井E&Sホールディングス三井E&Sプラントエンジニアリング(プラント工事)
ブティックス※eコマース管理・運営事業
サッポロHD米飲料統括持ち株会社
ネクソンgloops(ソーシャルアプリ事業)
ジー・スリーHDSBY(ショップ運営事業)
楽天米子会社(電子書籍配信サービス)
ピーエイピーエイケイ(認可保育園運営)
北越コーポレーション中国子会社(感熱紙製造)
ジャパンシステム※セキュリティー事業
小僧寿し介護サポートサービス(サ高住の運営)

※は事業譲渡。HDはホールディングス

文:M&A Online編集部