経営権をめぐり緊張状態にあるコクヨとぺんてるの文具大手2社の関係が新たな段階に入った。コクヨはこれまで投資会社のマーキュリアインベストメントを通じて間接保有していたぺんてるの株式37.45%について直接保有に切り替えた。コクヨが持ちかけた業務提携を拒んできたぺんてるが方向を転換し、両社は協力関係構築に向けた協議を開始することで合意した。とはいえ、すんなりと“相思相愛”に発展すると見る向きは少ない。

株式の「直接保有」を容認

コクヨが間接的ながら、ぺんてるの筆頭株主に躍り出たのは今年5月初めのこと。ぺんてるの株式37.45%を保有するマーキュリアインベストメント傘下の投資ファンド「PI投資事業有限責任組合」に約101億円を出資し、全持分を取得したのだ。

ぺんてるは「発表当日に通知されたにとどまり、今後の方針は一切未確定」としたうえで、「コクヨは同組合の有限責任組合員となったものであり、直接、当社株主になったわけではない」と抵抗の姿勢を示していた。

それが一転、直接保有を容認することになった。ぺんてるは9月24日開いた取締役会で、同組合からコクヨへの株式の譲渡を承認し、同日付で譲渡が完了した。株の保有に端を発した対立が長期化するのは事業展開のうえでも得策ではないと判断した模様だ。

ぺんてるは資本上、コクヨの持分法適用関連会社として、コクヨグループ入りすることになる。ぺんてるにとっては経営の独立性堅持が譲れないスタンスだが、業務提携に向けた今後の協議では規模で圧倒するコクヨが主導権を握る可能性が高い。直近売上高をみると、コクヨ3151億円、ぺんてる403億円で、両社には8倍の開きがある。

コクヨの東京品川オフィス(東京・品川)

コクヨを凌駕する海外事業網

ぺんてるにあって、コクヨにないものとは。それはぺんてるが長年築いていた海外事業網だ。コクヨが同社にモーションをかけた理由もそこにある。人口減少などで国内市場が縮小に向かっていることが背景にある。

ぺんてるは海外22の販売拠点を持ち、約120カ国で事業を展開。サインペンなどでブランド力を確立している。なかでも1960年代から進出した欧米で強みを持つ。海外工場も欧、中南米、アジアに6拠点構える。海外売上比率は65%を超え、文具業界でもダントツだ。

コクヨは中国、インドなどアジアを中心に展開するが、海外売上比率は7%程度。海外に限れば、比率だけでなく、実額ベースでもぺんてるに及ばない。ぺんてるの販売網が魅力的に映るのは想像に難くない。

もちろん、ぺんてるとしてもコクヨの強固な経営基盤を活用できる利点が生まれる。

ぺんてる本社にある地球儀を模したモニュメント

事の発端は創業家出身社長の解任にあり

ぺんてるは非上場企業。にもかかわらず、なぜ同社の4割近い株式が出回っているのか。事の発端は2012年に業績不振などを理由に創業家出身の堀江圭馬氏が社長を解任されたことにさかのぼる。

堀江氏側が保有していたのが37.45%の株式で、2018年にマーキュリアインベストメントが取得した経緯がある。その出口(投下資金の回収)戦略が今回のコクヨへの株式譲渡だったわけだ。

業界勢力に影響に与える可能性も

コクヨは総合文具最大手で、オフィス家具も手がける。これに続くのがプラス。ぺんてるは筆記具分野でパイロットコーポレーション、三菱鉛筆、サクラクレパス(非上場)に次ぐ業界4位に位置する。

コクヨとぺんてるの資本・業務提携の行方次第では業界の勢力図に影響を与える可能性があるだけに、双方が満足できるウィンウィンの関係を築けるのかどうか要ウオッチだ。

文:M&A Online編集部