上場企業の間で希望(早期)退職者を募集する動きが加速している。「秋の陣」を迎えた9月以降、カーエアコン大手のサンデンホールディングス(HD)、手芸用品・生活雑貨の藤久など4社が計画を発表した。今年に入って希望退職者募集を打ち出した企業数は20社を超え、前年比倍増の勢いだ。

一方、アパレル大手のレナウンは10月半ば、8月下旬に公表していた希望退職者募集を事業環境の変化を理由として、いったん中止することを決めた。

サンデンHDは2016年に続く募集

サンデンHDは10月2日、国内グループ社員を対象に200人程度の希望退職者を募集すると発表した。募集期間は10月25日~11月8日。年齢や勤続年数の条件は明らかにしていない。通常の退職金に特別支給金を上乗せするほか、再就職支援を行う。希望退職者の募集は2016年に同規模で実施して以来。

同社は過去3年間で2度(2017年3月期と19年3月期)、200億円を超える最終赤字を計上した。経営立て直しと次の成長に向けて、抜本的な構造改革を推し進めている。

今回の希望退職者募集に先立つ10月1日付で、店舗用冷蔵・冷凍ショーケースや自動販売機などの流通システム事業を、投資ファンドのインテグラル(東京都千代田区)に500億円で譲渡した。

レナウン、仕切り直しで「規模」拡大も

レナウンが希望退職者募集を中止すると発表したのは10月15日。関係会社を含む40歳以上の社員を対象に10月上旬に150人規模で募集する予定(退職日は11月30日)だったが、「あらためて事業環境の変化を検証する必要性や、従業員の声などをもとに検討した結果」の判断だとしている。

大きな要因として考えられるのが、その5日前の10日、セブン&アイ・ホールディングスが傘下百貨店のそごう・西武の地方5店舗の閉鎖や売り場縮小を含む事業構造改革を発表したこと。レナウンにとって百貨店は主要販路の一つだけに、影響を見極める必要ができたというわけだ。今後、計画を練り直すことになるが、希望退職者の募集規模が膨らむ可能性がある。

レナウンの本社が入るビル(東京・有明)

9月中に希望退職者募集を公表したのは中村超硬、クボテック、藤久。

中村超硬は電子材料の切断に使われるダイヤモンドワイヤの生産から11月末に撤退するのに合わせ、同部門を対象に60人程度を募集(10月上旬)した。同社は2020年3月期までに債務超過を解消できないと上場廃止(マザーズ)という窮地にある。8月末には医薬品関連事業からの撤退も決めている。

藤久、赤字脱却に大ナタを

手芸専門店「トーカイ」などを全国に約450店舗展開する藤久は4年連続の減収、最終赤字に陥っている。30人程度とする募集人員は45歳以上・勤続10年以上(2020年1月15日時点)の社員を対象とし、全社員の約13%にあたる。本社部門のスリム化や不採算店舗の閉鎖などのコスト削減を進め、2021年6月期に黒字転換(20年6月期も赤字見込み)を目指す。

クボテックは10月7日~16日を期間として募集した。その人員規模は定めず、1人の応募があった。フラットディスプレーパネル(FPD)用の画像処理外観検査装置を主力とするが、中国向け受注の不振が直撃。2019年3月期は売上高が半減したうえ、売上高の2分の1近い営業赤字に転落した。京都市内の工場閉鎖・生産統合を実施し、役員報酬や管理職給与のカットなど固定費削減を進めている。

希望退職者の募集は上期(1~6月)で12社に上り、昨年1年間にほぼ並んだ。下期も一時棚上げしたレナウンを含めれば、すでに10社を数える。米中貿易摩擦や中国経済の成長鈍化などで、国内景気の先行きにも不透明感がぬぐえず、秋の深まりとともにリストラ圧力が一層強まるおそれがある。

◎2019年に入り、希望・早期退職者募集を発表した企業

発表月社名募集規模と応募人数
10月サンデンHD200人程度(10月25日~11月8日)
9月中村超硬60人程度(10月1日~11日)
クボテック定めず(10月7日~16日)→1人応募
藤久30人程度(11月1日~20日)
8月ヤマハモーターロボティクスHD 70人程度(傘下の新川など2社)→73人応募
レナウン150人程度(10月上旬予定)→中止
アサヒ衛陶約15人→18人応募
7月TATERU160人程度→136人応募
キョウデン定めず→129人応募
富士通フロンテック100人程度
6月ジャパンディスプレイ1200人→1266人応募
5月Aiming40人程度→51人応募
東芝約350人(システムLSI事業子会社の東芝デバイス&ストレージで)→414人応募
4月中外製薬定めず→172人応募
3月メガチップス40人程度→42人応募
2月協和発酵キリン定めず→296人
鳥居薬品定めず→281人応募
ルネサスエレクトロニクス900人程度(推定)
コカ・コーラボトラーズジャパンHD700人程度→950人応募
1月アルペン300人程度→355人応募
光村印刷30人程度→子会社の新村印刷で実施済み
カシオ計算機定めず→156人応募

※HDはホールディングスの略。上記以外に日産自動車は7月末に国内外で1万2500人の人員削減を発表。この中で国内従業員の一部は早期退職者制度の活用が見込まれている。

文:M&A Online編集部