希望(早期)退職者の募集に踏み切る上場企業が増加の一途をたどっている。11月だけで5社が計画を発表し、その顔ぶれも味の素、LIXILグループ、ファミリーマート、ノーリツ、オンキヨーと有名どころが並ぶ。

その内容をみると、業績が堅調なうちに人員体制の適正配置の一環として幹部社員などを中心に人員削減に取り組むケースと、不振事業などからの撤退に伴い人員削減に迫られるケースに大別され、明暗が分かれる。

今年に入って希望退職者の募集を発表した企業は少なくとも27社に上り、すでに前年の倍以上に達する。

味の素、ファミマは初の実施

味の素は、50歳以上の管理職を対象に特別転進支援施策を導入し、100人程度の希望退職者を募集する。募集期間は2020年1月6日~3月13日。退職日は6月30日。通常の退職金に特別加算金を上乗せするほか、再就職支援を行う。人数や期間を決めて希望退職者を募集するのは同社として初めて。

中長期的な事業構成に沿った組織再編や人材配置を進めるのが目的という。今回の募集人員約100人は全社員(単体)約3490人の3%に満たない、しかし、対象者である満50歳以上(2020年6月末時点)の管理職は約800人と、全体の4人に1人に相当する。

味の素の足元の業績をみると、2020年3月期予想は1%増の1兆1385億円、最終利益39%減の180億円。ちなみに、国内の食品会社(ビールなど飲料会社を除く)で売上高が1兆円を超えるのは日本ハム、明治ホールディングス、山崎製パンと同社の4社しかない。

同様に、初めて希望退職者募集を打ち出したのがファミリーマート。2020年2月までに全社員の約1割にあたる約800人を募集する。原則40歳以上が対象(出向者を含む)で、本部組織の構造改革の一環としている。市場の飽和などコンビニ業界を取り巻く厳しい経営環境を勝ち抜くため、先んじて組織のスリム化・業務効率化を進める。

ノーリツ、住設分野撤退で約2割人員削減へ

業績の悪化や不振に伴い、希望退職者を募集するのはノーリツとオンキヨーだ。

ノーリツは不採算の住設システム分野から撤退し、システムキッチン、システムバス、洗面化粧台の生産・販売を2020年6月末に終了することを決めた。これに伴い、1月に、約600人の希望退職者を募集する。全社員(3168人、9月末)の2割近くに上る規模で、45歳以上の正社員(2020年3月20日時点)、契約社員が対象。

ノーリツは一連の構造改革費用として2020年12月期に特別損失70億円を計上する。経営責任を明確にするため、社長以下の役員報酬50%~10%を6カ月間減額する。

今後、給湯器やコンロなど温水・厨房機器に経営資源を集中する。今年1月には52億円を投じて、米国のガス・石油ボイラメーカー、PB Heat社(ペンシルベニア州)を買収するなど攻めの施策も推進中だ。

予期せぬ展開になったのが経営再建中のオンキヨー。米企業に対するホームAV事業の売却(約82億円)が10月に白紙撤回となったからだ。再建計画の前提が崩れたことで、改めて抜本的な合理化を迫られ、11月に入って本社などの拠点集約と並んで約100人の希望退職者募集を打ち出した。40歳以上60歳未満の正社員で拠点集約による転勤者が対象。退職日は2020年3月末日。

LIXILグループは2012年以来の募集

一方、人数は定めていないものの、「キャリアオプション制度」の名称で希望退職者を募集するのはLIXILグループだ。募集期間は2020年2月17日~2月28日で、本体と国内子会社の一部子会社に在籍する50歳以上勤続10年以上の正社員を対象とする。

LIXILグループが希望退職者を募集するのは2012年以来。この時は建材・住宅設備事業子会社のLIXILを中心に900人規模で募集したところ、倍以上の1884人の応募があった。今回導入した同制度については当面5年間の運用を予定しているという。

LIXILグループはトップ人事をめぐる創業家と元CEOとの対立が昨秋から半年以上続くなど経営混乱に陥り、業績改善と合せて社会的にも信頼回復の途上にある。

LIXILグループの本社(東京都江東区)

下期さらに勢い増し、すでに15社

希望退職者の募集は上期(1~6月)で12社を数え、昨年1年間にほぼ並んだ。下期はさらにペースが上がり、15社に達する。

9月の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)によると、大企業・製造業の景況判断DI(業況判断指数)はプラス5と、3四半期連続で悪化し、6年3カ月ぶりの低水準となった。米中貿易摩擦の激化など世界経済の不透明感が広がっていることが背景にあり、引き続き、国内企業へのリストラ圧力の高まりが予想される。

◎2019年に入り、希望(早期)退職者募集を発表した企業

発表月社名募集規模と応募人数
11オンキヨー約100人(12月12日~20日)
ファミリーマート約800人(2020年2月までに募集)
LIXILグループ定めず(2020年2月17日~28日)
ノーリツ約600人(2020年1月17日~31日)
味の素100人程度(2020年1月6日~3月13日)
10サンデンHD200人程度→215人応募
9中村超硬60人程度(10月1日~11日)
クボテック定めず(10月7日~16日)→1人応募
藤久30人程度(11月1日~20日)
8ヤマハモーターロボティクスHD 70人程度(傘下の新川など2社)→73人応募
レナウン150人程度(10月上旬予定)→募集中止
アサヒ衛陶約15人→18人応募
7TATERU160人程度→136人応募
キョウデン定めず→129人応募
富士通フロンテック100人程度→159人応募
6ジャパンディスプレイ1200人→1266人応募
5Aiming40人程度→51人応募
東芝約350人(システムLSI事業子会社の東芝デバイス&ストレージで)→414人応募
4中外製薬定めず→172人応募
3メガチップス40人程度→42人応募
2協和発酵キリン定めず→296人応募
鳥居薬品定めず→281人応募
ルネサスエレクトロニクス900人程度(推定)
コカ・コーラボトラーズジャパンHD700人程度→950人応募
1アルペン300人程度→355人応募
光村印刷30人程度→子会社の新村印刷で実施済み
カシオ計算機定めず→156人応募

※HDはホールディングスの略。上記以外に日産自動車は7月末に国内外で1万2500人の人員削減を発表。この中で国内従業員の一部は早期退職者制度の活用が見込まれている。

文:M&A Online編集部