大学発ベンチャーの「起源」(30) Kyoto Robotics ー 日立が惚れこんだスタートアップ

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日立が基幹事業を成長させるために買収

カメラが捉える画像は平面的で、奥行きを認識するのは難しい。そこで同社のシステムは複数のカメラとプロジェクターによる光照射を組み合わせることで、奥行きなど立体的な空間把握を実現した。これにより人間の目視に近い認識が可能になる。

同社が開発した「目」(3次元ビジョンシステム)と「頭脳」(AI制御システム)を搬送ロボットと組み合わせることで、人間による作業と同様の荷さばきを実現した。重量物の飲料が入ったダンボールをパレットから降ろすロボットシステムをハマキョウレックス<9037>の尼崎センターへ、自動倉庫のパレットから事前登録のない様々な荷物の積み下ろしができるロボットシステムを日立物流<9086>の富山Ⅳ期物流センターへ、それぞれ納入するなど大手物流事業者との取引も広がっている。

2009年8月に、しがぎんリース・キャピタルと中信ベンチャーキャピタルから3600万円、2011年3月にエンゼルキャピタルから3000万円、2015年3月に豊田通商<8015>、オムロンベンチャーズ、SMBCベンチャーキャピタルから1億3200万円、2016年5月には産業革新機構、スパークス・グループ<8739>・トヨタ自動車<7203>・三井住友銀行の3社が出資する「未来創生ファンド」、三菱UFJキャピタルから7億円と、相次いで資金調達に成功した。

そして2021年4月1日に、日立製作所<6501>がKyoto Robotics株の約96%を取得し*、子会社化している。日立は買収により、高度な知能ロボットシステムの技術・ノウハウを獲得し、日立グループが提供するロボットSI(システムインテグレーション)事業の高付加価値化を図る。

一方、Kyoto RoboticsはロボットSI事業に注力する日立グループの一員になることで、単独では実現が難しい多数の顧客に自社技術を提供できるようになった。同社の徐社長は「日本では珍しい大企業によるベンチャー企業の買収の先例となり、わが国のオープンイノベーションの促進に貢献できる」と喜んでいる。

日立という大きな「後ろ盾」を得たKyoto Roboticsが、今後どのような技術革新を引き起こしていくのか注目だ。

 *取得金額は非公表

文:M&A Online編集部

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