大学発ベンチャーの「起源」(21) Dinow

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Dinow(水戸市)は茨城大学発の医療検査ベンチャー。2020年3月に生体試料を用いた健康状態管理サービスを普及するために設立した。9月25日に大学から「茨城大学発ベンチャー」として公式に認定された。

福島原発事故がきっかけ

事業のきっかけは取締役CTO(最高技術責任者)を兼務する中村麻子茨城大学大学院理工学研究科理学野教授が、2011年に発生した東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する「放射線の影響に対する強い不安」をどうにか解消したいと取り組んだDNA損傷評価だった。

中村教授は放射線被曝(ばく)で生じるがんや老化、炎症といった生体応答をDNA損傷から解明する放射線生物学の研究が専門。一方、髙橋健太代表取締役CEO(最高経営責任者)は同研究科量子線科学専攻環境放射線科学コース博士前期課程に在学中の大学院生だ。

髙橋CEOは中村教授の教え子で、DNA損傷を自動で検出する装置の研究に取り組んでいる。研究発表の反響が大きく「論文を出して終わりの研究にとどめず、サービスの社会実装まで自分の手で取り組みたい」と考えるようになったという。

2019年に中村教授と共同でDNA損傷評価技術の事業化に向けた活動をスタートした。同9月に開催された「第6回バイオテックグランプリ」で、1滴の血液サンプルから自分の健康状態をDNAレベルで把握し、放射線被曝リスクや健康リスクなどを知り、自身のケアを考えることができる生体内DNA損傷を測定するシステムを提案。「吉野家賞」「ロート賞」を受賞した。

放射線被曝から始まった研究だが、DNA損傷は放射線だけではなく日常の様々なストレスによっても生じる。DNA損傷の数を測ることで放射線だけでなく、多様な要因による病気へのリスクを測定できるため汎用性が高い。「放射線影響評価」「修復能力評価」「生活習慣評価」の3つのサービスの展開を視野に入れている。

現在、社員は髙橋CEOと中村CTOの2人だけ。今後は自社にない知識や経験を持った人材や企業など協力して事業を展開していく方針だ。

文:M&A Online編集部

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