大学発ベンチャーの「起源」(25) セルジェンテック

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セルジェンテック(千葉市中央区)は千葉大学発の遺伝子治療・再生医療の医薬品開発ベンチャー。2003年10月、後に千葉大の学長となる同大学の齋藤康教授が取り組んだ遺伝子治療用脂肪細胞の研究をベースに事業化した。

ヒト脂肪細胞を利用した先端治療を目指す

同社が開発を進めているのは、ヒト脂肪細胞を用いた遺伝子導入細胞医薬品(GMAC=Genetically Modified Adipocyte)。遺伝的に機能タンパク質や酵素が欠損しているために発症する疾患の治療薬に利用する。

こうした疾患の治療法は生涯にわたっての通院治療や生活制限などを強いられるため、患者の生活の質(QOL=Quality of Life)の低下は避けられない。GMACはタンパク質や酵素をつくり出す仕組みを患者の体内で再生させる医薬品で、一度GMACによる治療を受けると3〜5年にわたって患者の体内で持続的にタンパク質や酵素が分泌されるため、QOLは大幅に向上する。

セルジェンテックはヒト脂肪細胞を用いることで、効果の持続性と安全性が高い遺伝子治療・再生医療の実現を目指す。脂肪細胞は寿命が10年と長く、治療に有効な生理物質を分泌する機能がありながら、がん化しにくく細胞が移動しないなど優れた特長を持つ。

同社は2005年から千葉大学と共同で遺伝的にタンパク質や酵素が欠損している疾患向けのGMACの研究開発を進めている。最初の臨床適用は、治療法がない希少疾患「レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症」向けのGMAC研究だ。

この疾患は血液中の善玉コレステロールの値が非常に低くなり、角膜が濁って目が見えにくくなる角膜混濁や腎機能障害、溶血性貧血などの障害を引き起こす。欠損している酵素を点滴して治療する遺伝子組換え型hLCAT蛋白質(rhLCAT)補充療法は、定期的な治療を一生続けなければいけない。悪くなった角膜や腎臓を移植しても、再発のリスクは避けられなかった。GMACが実用化されれば、画期的な治療法となる。

ダイドーグループとライセンス契約

セルジェンテックは2021年1月15日に、ダイドーグループホールディングスの子会社で医薬品関連事業を手がけるダイドーファーマ(大阪市)とライセンス契約を締結した。LCAT欠損症などコレステロールが体内で正常に処理できない状態を引き起こす疾患向け医薬品の共同開発・販売に当たる。

「GMACは失われた生理活性を作り出す、いわば生産工場だ」と、セルジェンテックの麻生雅是社長は話す。将来はインシュリン分泌機能を回復させて糖尿病を治療したり、がんやアルツハイマーの発症や進展を抑制する生体内タンパク質の補給で疾患を抑制したりする可能性もあるという。応用範囲はさらに広がりそうだ。

文:M&A Online編集部

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