大学発ベンチャーの「起源」(24) フェニックスバイオ

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フェニックスバイオ<6190>は、広島大学発の医療試験ベンチャー。人間と同じ肝機能を持つマウスを使った薬効試験の受託などを手がける。

人間の肝臓を持つネズミで新薬開発支援

同大学理学研究科の吉里勝利教授(現大阪市立大学大学院医学研究科特任教授・自治医科大学医学部客員教授)が1997年から「広島県組織再生プロジェクト」で進めていたヒト肝臓の再生研究を事業化するため、2002年3月に設立された。2016年3月には東証マザーズ市場に上場を果たしている。

人間の肝細胞の機能と増殖能力に着目し、肝細胞の機能を維持したまま実験動物体内で大量に増殖させる技術を確立した。現在の主力業務はヒト肝細胞キメラ(PXB)マウスを用いた動物実験での新薬開発支援サービスだ。

具体的には薬物の安全性試験や肝炎ウイルス関連試験、人間に特異的な分子を標的とする医薬品の有効性試験などを提供する。PXBマウスの専門家たちが動物試験を実施することで、正確性の高い試験を短期間で実施できるのが強み。

試験で利用するPXBマウスの肝臓は、概ね80~85%が正常な人間の肝細胞で構成されている。そのため人間による治験に近い動物実験が可能になる。種特異性が高く動物実験が難しかったB型・C型肝炎ウイルスに対する薬剤の抗ウイルス効果の確認などに利用されている。

同社は年間4000匹以上のPXBマウスを安定供給しているため同品質の個体を利用でき、動物実験でも信頼性の高いデータを得られるという。海外企業の評価が高く、売り上げの約7割は海外からの受注だ。とりわけ北米の製薬企業が多く、米国に子会社のPhoenixBio.USA Co.(ニューヨーク市)を設立している。 

2020年12月には国立研究開発法人国立成育医療研究センターとの共同研究で開発した「OTC(オルニチントランスカルバミラーゼ)遺伝子欠損ヒト肝細胞キメラマウス」の商業利用を始めると発表。けいれんや意識障害、行動異常、発達障害などの神経学的異常を引き起こすOTC欠損症研究に役立つと期待されている。

この発表を受けて同社の株価も上昇した。これは直ちに収益につながるものではないため、中期的な成長につながることを好感したものとみられる。

文:M&A Online編集部

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