上場企業による子会社・事業の売却が過去10年で最多に

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ソフトバンクGは半導体設計のアームを売却(写真はイメージです)

上場企業が2020年に子会社や事業を売却すると発表した件数が、過去10年で最多となった。売却理由に新型コロナウイルスの影響を挙げたのはわずかだが、多くの案件で業績の悪化が背景にあり、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う景気低迷が要因の一つとなったことがうかがえる。 

ソフトバンクG、売却益は9000億円

M&A Online編集部が全上場企業に義務付けられた適時開示情報のうち経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について集計したところ、2020年に上場企業による子会社や事業の売却案件が285件となり、2011年以降の10年間では2012年の238件を上回り最多となった。

285件の合計の取引金額は4兆9460億円で、この10年間では2016年の3兆1582億円を上回り、こちらも最高額となった。ソフトバンクグループ<9984>が英国の半導体設計大手アームを米国の大手半導体メーカー・エヌビディアに4兆2000億円で売却することを決めた大型案件があったため金額が一気に膨らんだ。

2020年の全M&A件数は849件で、この10年間では2019年の853件に次ぎ2番目に多かった。このうち上場企業による子会社や事業の売却案件は33.6%を占め、この10年間では2012年の32.6%を上回り最も高い構成比となった。

2020年の全M&Aの取引金額は11兆559億円で、この10年間では2018年の13兆7836億円、2016年の12兆1407億円に次ぎ3番目に多かった。このうち上場企業による子会社や事業の売却案件は44.7%を占め、この10年間では2017年の42.9%を上回り、こちらも最も高い構成比となった。

武田薬品、非中核の大衆薬事業を売却

取引金額が4兆2000億円と最も高かったソフトバンクグループは、2016年9月にアームを約3兆3000億円で買収しており、今回の売却で9000億円規模の差益を得ることになる。投資先企業の業績不振に伴い、手元資金を確保する狙いがあったようだ。売却完了は2022年3月ごろの見込み。

次いで取引金額が多かったのは武田薬品工業<4502>が8月にビタミン剤アリナミンなどの大衆薬を手がける武田コンシューマーヘルスケア(東京都千代田区)の全株式を米投資ファンドのブラックストーンに売却すると発表した案件で、売却金額は企業価値2420億円に純有利子負債などを加味して決める。

武田薬品は2018年に6兆円超を投じてアイルランドの製薬会社シャイアーを買収しており、この取引で膨らんだ借入金圧縮の一環として、非中核と位置づける大衆薬を切り離すことにした。

取引金額が3番目に多かったのはLIXILグループ(2020年12月にLIXILに社名変更)<5938>が、ホームセンター中堅のLIXILビバをアークランドサカモト<9842>に売却した案件で、アークランドサカモトはTOB株式公開買い付け)などを通じて全株式を約1085億円で取得した。

LIXILグループは主力の建材・住宅設備機器事業に経営資源を集中するため、約53%を保有するLIXILビバ全株式を566億円で売却した。

【2020年の上場企業による子会社・事業の売却金額上位10件】

順位 案件内容 売却金額
1 ソフトバンクグループ、傘下の英半導体設計大手アームを売却 4兆2000億円
2 武田薬品工業、一般医薬品の武田コンシューマーヘルスケアを売却 2420億円
3 LIXILグループ、ホームセンター中堅のLIXILビバを売却 566億円
4 住友不動産、中国大連での分譲マンション開発子会社を合弁相手に売却 456億円
5 三井E&Sホールディングス、航空機機装品製造の昭和飛行機工業を売却 455億円
6 キリンホールディングス、豪州の飲料事業を乳製品大手の現地社に売却 409億円
7 フェローテックホールディングス、半導体ウエハー製造の中国子会社を売却 296億円
8 富士通、富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を売却 287億円
9 スカラ、営業支援サービスを提供するソフトブレーンを売却 232億円
10 東芝、東芝グループ製品の物流業務を担う東芝ロジスティクスを売却 201億円

文:M&A Online編集部

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