新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けた外食業界。第3波到来で最も稼げる大型の忘年会が消滅しました。4月の緊急事態宣言下で描いていた経済の回復のシナリオの中でも、最悪のものとなっています。特に宴会への依存度が高かった企業への打撃は深刻。そんな中、M&Aで別業態を取り込む動きが活発になってきました。各社は別業態に活路を見出し、経営方針やビジネスモデルを大転換しています。

運転資金が尽きて倒産へと追い込まれる飲食店も後を絶ちません。東京商工リサーチの「飲食業の倒産動向調査」によると、2020年の飲食店倒産件数は12月22日までで810件に達しており、2011年の800件を超えて過去最多を更新。新年会、歓送迎会が自粛へと追い込まれれば、飲食店は更なる困難に見舞われます。体力のある企業が倒産した会社のスポンサーとなり、事業を継続するケースは増加するものと予想されます。

この記事は、外食M&Aの以下三つのニュースを軸に業界の将来を見通すものです。

1.コロワイド<7616>による大戸屋ホールディングス<2705>の敵対的TOB
2.木曽路<8160>の焼肉店「大将軍(千葉市)」の買収
3.東京一番フーズ<3067>の「寿し常」事業の譲受

債務超過の大戸屋を優先株で救済したコロワイド

大戸屋
セントラルキッチン化は見直しを迫られた

コロワイドは、大戸屋ホールディングスに外食業界で初となる敵対的TOBを仕掛けました。2020年3月期に赤字転落した大戸屋は、セントラルキッチンを導入して生産性を高め、経営陣を刷新して経営方針を改めることで、業績回復ができるとコロワイド側は説明しました。外食企業の株式は個人が優待目的で保有しているケースが多く、大戸屋の株主が店内調理などの昔ながらの経営方針に賛同している保有者が多いため、プレミアム価格で買い取るTOBが成立するのか注目を集めました。

コロワイドはTOBの期限当日の8月25日に形成不利とみて期日を10営業日延長しました。更に保有比率を当初の45%~51%から、40%~51%に下限を5%引き下げ。40%以上を保有して役員を派遣し、実質的に支配できれば連結子会社化できると踏んだものです。

9月8日に46.77%を確保し、TOBが成立。コロワイドは経営陣の刷新を実施します。新社長はコロワイド会長・蔵人金男氏の長男、蔵人賢樹氏。元社長の窪田健一氏は退任となりました。かつて大戸屋のお家騒動の中心人物となった三森智仁氏が役員として経営に参画します。

蔵人賢樹氏は臨時株主総会で店内調理を維持し、仕入れの見直しをすることなどを宣言。既存株主の意見やこれまでの経営方針を尊重する方向へと態度を軟化させています。

コロワイドは、2019年10月に大戸屋の創業家一族から株式を譲受して18.67%を保有する筆頭株主になっていました。その後、大戸屋の経営陣に買収提案などをするものの、話が進まずに敵対的TOBに踏み切ったとされています。コロワイドが買収を急いだ背景には、日常食業態の早期取り込みが必要だったものと考えられます。

「甘太郎」を軸に成長したコロワイドは、非日常食業態が得意な会社です。それはM&Aによる成長戦略を描いた後も色濃く反映されています。回転寿司店やステーキレストランなどを運営するアトム<7412>、焼肉「牛角」のレックス・ホールディングス(現:レインズインターナショナル)、かっぱ寿司のカッパ・クリエイト<7421>など、買収した会社は晴れの日需要に強い企業ばかりでした。新型コロナウイルスの影響が強く出る業態が多いとも言えます。

コロワイドの2021年3月期第2四半期の売上高は前期比39.3%減の728億5,200万円となり、純損失額は57億8,800万円(前年同期は1億1,400万円の黒字)となりました。通期の売上は前期比19.6%減の1,892億600万円とやや強気の予想をしていますが、コロナ第3波襲来による忘年会の自粛、時短営業の影響で見通しは暗くなっています。その点、日常食である食堂はランチなどの安定的な収益が見込める魅力的な業態です。ポストコロナの外食業界のキーワードの一つは、展開する業態の多様化が挙げられます。コロワイドはいち早くそれを進めました。

しかし、大戸屋もコロナ禍で業績が悪化しました。2021年3月期第2四半期の売上高は前期比40.5%減の73億3,200万円。純損失は46億5,400万円(前期は1億7,400万円の赤字)と損失額が膨らみました。大戸屋は14億9,500万円の債務超過に転落。大戸屋はコロワイドを引受先とする優先株を発行して30億円を調達します。大戸屋は長期的な業績回復に取り組む体制が整いました。

コロワイドは既存株主に配慮し、株式の希薄化が生じない優先株による増資を選択しました。