2020年3月のM&A件数は適時開示ベースで、前年同月を4件上回る86件となり、3月単月として09年(88件)以来11年ぶりの高水準を記録した。2月に比べると9件増えた。国内でも新型コロナウイルスの影響が広がる中、M&A市場への波及も懸念されていたが、数字上はひとまず先送りされた格好だ。

ただ、海外企業を対象とする買収案件は7件にとどまり、直近1年で最少となった。コロナ・ショックの拡大とともに、産業界には慎重姿勢が急速に強まっており、4月以降、国内M&A市場が縮小に転じる可能性が高い。

一方、1~3月期(第1四半期)のM&A件数は232件で、前年同期より10件増え、こちらも09年以来の高い水準となった。

総件数は好調キープも「海外買収」半減

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

3月に開示されたM&Aの総件数86件の内訳は買収78件、売却8件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。前半は伸び悩んだものの、後半に盛り返し、最終的に09年(88件)以来の高水準となった。

1月(69年)も09年以来の高水準、2月(77件)は09年以降で3番目だったが、3月も好調を維持した。3月は年度末ということから、例年、件数が尻上がりに伸びる傾向がある。

そうした中、目を引いたのは海外案件の落ち込み。今年3月の総件数のうち海外案件は買収7件、売却(海外子会社化など)3件の計10件。とくに海外の買収案件は2月14件の半分で、昨年6月と並び過去1年で最低だった。

欧米、アジア・その他とも案件が半減した。新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大している影響が考えられる。

取引金額1000億円を超える大型M&Aは1月、2月と2カ月連続でゼロだったが、3月は5000億円クラスの案件が成立した(表を参照)。

三菱商事・中部電力、オランダ企業を5000億円で買収

今年最大となったのが、欧州で電力、ガスなど総合エネルギー事業を展開するオランダのエネコ(ロッテルダム)を買収した三菱商事と中部電力の案件。三菱商事が80%、中部電力が20%出資する新会社が全株式を41億ユーロ(約5000億円)で取得した。両社は昨年11月に買収の優先交渉権を獲得していた。欧州で普及する風力発電など小型分散電源に関する技術・ノウハウを取り込む。

金額2位は、ノーリツ鋼機が350億円を投じてDJ・クラブ機器最大手のAlphaTheta(アルファシータ、横浜市)を子会社化する案件。成長分野への事業多角化が狙い。有利子負債約300億円の返済も引き受けるため、実質的な買収額は650億円に上る。AlphaThetaは2015年に米投資ファンドの主導でパイオニアから分離独立。DJ・クラブ用プレーヤーで世界トップに立つ。

JMDCは、ノーリツ鋼機傘下で医療機関向けに診療報酬ファクタリング事業を手がけるエヌエスパートナーズ(東京都港区)の子会社化を発表した。買収金額は44億5000万円。売手のノーリツ鋼機としては新たな大型買収を仕掛けるタイミングで、原資の一部を獲得したことになる。

シャープは、液晶ディスプレーなど映像表示装置を製造するNECディスプレイソリューションズ(東京都港区)の株式66%を92億4000万円で取得して子会社化(7月1日)することを決めた。引き続き34%の株式を持つNECと共同運営する。