2020年8月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比5件減の68件だった。前年を下回るのは4月以来4カ月ぶり。前月比では2件減った。新型コロナウイルス感染の影響下でも増勢が続いていたM&A市場が踊り場を迎えたかどうかを判断するうえで9月の動向が注目される。

件数はやや足踏みが見られたものの、金額では今年初となる1兆円を上回る超大型案件が2件あった。なかでも米コンビニ第3位のスピードウェイを2兆2176億円で買収するセブン&アイ・ホールディングスの案件は、日本企業によるM&Aとして歴代4位のスケールだ。

セブンの2.2兆円を筆頭に上位案件が突出

全上場企業に義務付けられた東証適時開示のうち、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。8月のM&Aの総開示件数68件の内訳は買収54件、売却14件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。このうち、海外案件は11件(買収7件、売却4件)で、前年同月に比べると7件少ない。

M&A市場は新型コロナ感染の逆風下、国境を超える海外案件が低調だった半面、国内案件が底堅く推移。1月から8月までのトータルでも前年を上回る水準をキープしている。ただ、この間、金額が張る海外の大型案件がほぼ姿を消し、全体として案件の小型化傾向が続いていた。

8月の取引金額10億円超のM&Aは11件。4カ月ぶりに2ケタに回復した7月(13件)に続き10件以上を確保したものの、コロナ以前の月間20件前後にはほど遠い。こうした中、8月は上位案件が突出した。

その顔ぶれはセブン&アイ、日本ペイントホールディングス、武田薬品工業。

セブン&アイは8月3日、米国でガソリンスタンド併設型コンビニ約3900店を展開するスピードウェイを220億ドル(約2兆2176億円)で買収すると発表した。スピードウェイは全米に約3900店舗を持つ業界3位。

セブンの米子会社「セブン-イレブン」は全米トップの約9800店舗を展開するが、シェアは6%程度にとどまる。セブンは今春にスピードウェイの買収に動いたものの、金額が折り合わず、いったん断念。今回、新型コロナなどを受けて買収金額が低下したタイミングで再交渉がまとまった格好だ。

買収完了は2021年1~3月。日本企業による海外企業買収として、武田薬品のアイルランド・シャイアー(2018年、6兆2000億円)、ソフトバンクグループの英ARMホールディングス(2016年、3兆3000億円)、日本たばこ産業の英ギャラハー(2006年、2兆2500億円)に続く巨額案件となる。

日本ペイント、シンガポール社の傘下に

セブン&アイとは対照的に、買われる立場となるのが塗料国内最大手の日本ペイント。筆頭株主のシンガポール塗料大手、ウットラムグループの傘下に入ることになったのだ。

ウットラムは日本ペイントの実施する第三者割当増資を引き受け、出資比率を現在の39%から59%に引き上げ、2021年1月1日に子会社化する。日本ペイントの上場は維持される。

ウットラムによる取得金額は1兆1851億円に上り、こちらは日本の上場企業を対象とした買収案件として過去最大だ。

シンガポール企業の傘下に入る日本ペイントホールディングス(東京・南品川の東京事業所)

武田薬品はビタミン剤「アリナミン」や風邪薬「ベンザ」などの大衆薬を手がける子会社の武田コンシューマーヘルスケア(東京都千代田区)の全株式を米投資ファンドのブラックストーンに売却する。売却金額は2420億円。

6兆円超のシャイアー買収で膨らんだ借入金圧縮の一環。消化器系疾患、がんなど医療用医薬品に経営資源を集中する一方、非中核と位置づける大衆薬を切り離す。

◎M&A:取引金額10億円以上の案件

1セブン&アイ・ホールディングス、米国でガソリンスタンド併設型のコンビニ事業を手がけるスピードウェイを買収(2兆2176億円)
2ウットラムグループ(シンガポール)、日本ペイントホールディングスへの出資比率を39%から59%に引き上げて子会社化(1兆1851億円)
3武田薬品工業、大衆薬製造子会社の武田コンシューマーヘルスを米ブラックストーンに譲渡(2420億円)
4ティーガイア、富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を取得(287億円)
5アント・キャピタル・パートナーズ、スカラ傘下のソフトブレーン(東証1部)をTOBなどを通じて完全子会社化(232億円)
6キユーソー流通システム、インドネシアの低温物流会社KIAT ANANDAグループ傘下の4社を子会社化(70億円)
7IMAGICA GROUP、映像関連の米Pixelogic Holdingsを子会社化(59.4億円)
8ジーエス・ユアサコーポレーション、サンケン電気から直流電源装置などの社会システム事業を取得(48億円)
9UACJ、傘下のUACJ物流(名古屋市)をセンコーに譲渡(31億円)
10ソラスト、首都圏を中心に介護事業を展開する日本エルダリーケアサービス(東京都港区)を子会社化(23.7億円)
11BuySell Technologies、ブランド品買取・販売やオークション事業のダイヤコーポレーション(東京都渋谷区)を子会社化(16.6億円)