2020年7月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比3件増の70件となり、3カ月連続で前年を上回った。7月としては2011年以降の過去10年で最多。新型コロナウイルス感染拡大の逆風下、国境を超える海外案件は低調だったものの、国内案件が底堅く推移し、件数は全体として増勢を維持。上場企業の子会社・事業の売却が増加したことも寄与した。

一方、案件の小型化傾向には一服感がうかがえる。今春以降1ケタにとどまっていた取引金額10億円超のM&Aは7月に13件あり、3月(15件)以来4カ月ぶりに2ケタに回復した。

全上場企業に義務付けられた東証適時開示のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

7月のM&Aの総開示件数70件の内訳は買収53 件、売却17件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。このうち、海外案件は13件(買収9件、売却4件)と2年ぶりに月間1ケタに落ち込んだ6月(9件)から持ち直したものの、前年同月に比べると4件少ない。

コロワイド、ペッパーFの外食2社に注目集まる

7月は外食で2件の注目M&Aがあった。一つはコロワイドが仕掛けた定食「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングス(HD)へのTOB(株式公開買い付け)。もう一つは経営再建中のペッパーフードサービスによる「ペッパーランチ」事業の売却だ。

大戸屋HDを巡るTOBは敵対的買収に発展した。コロワイドは約32%の株式を約72億円で追加取得して所有割合を51%あまりに高め、経営権を掌握する。株式上場は維持する予定。TOBは7月9日(~8月25日)に始まっているが、大戸屋HDは「企業価値・ブランド価値を毀損する可能性が高い」と猛反対している。

コロワイドが昨年10月、大戸屋HD創業家から株式を取得して筆頭株主になったのが事の発端。コスト削減のため食材の仕入れ・加工を工場で一括集中するセントラルキッチン方式を提案したが、店内調理を売り物とする大戸屋HDが聞き入れなかった。コロワイドは大戸屋HDの今年の株主総会で経営陣刷新を求めたが、否決され、ついに“実力行使”に出た形だ。

コロワイドに敵対的TOBを仕掛けられた大戸屋ホールディングス(都内の店舗)

ペッパーフードサービスは「ペッパーランチ」事業を投資ファンドのJ-STAR(東京都千代田区)に85億円で8月31日付で売却し、もう一方の柱の「いきなり!ステーキ」事業に経営資源を集中する。114店舗の閉鎖を計画し、約200人の希望退職者募集を7月に実施した。

2020年1~6月期は売上高が前年同期比47%減の184億円と半減し、最終赤字は79億円(前年同期は5億円の黒字)。「いきなり!ステーキ」は売上高の約8割を占めるが、出店の急拡大が裏目に出て業績が急降下しているところに新型コロナの影響が重なった。

住友ベーク、270億円投じて川澄化学にTOB

取引金額トップは、医療機器メーカーの川澄化学工業(東証2部)をTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化する住友ベークライトの案件。買付代金は約270億3880万円。住友ベークは現在、川澄化学の株式約23%を保有する。買付期間は8月3日~9月30日。

成長領域の血管内治療、内視鏡治療など低侵襲治療分野での事業展開を加速するのが住友ベークの狙い。川澄化学は人工透析製品などに強みがあり、近年、低侵襲の先端医療機器の研究開発に力を入れている。

金額2位は昭和産業が三井物産子会社でブドウ糖などを製造するサンエイ糖化(愛知県知多市)を買収する案件。全株式を150億7500万円で10月1日に取得する。昭和産業は米油大手のボーソー油脂(東証2部)へのTOBによる子会社化を7月に終えたばかりで、M&Aへの積極姿勢が目立つ。

TOBでいえば、伊藤忠商事によるファミリーマートの非公開化も話題を呼んだ。すでに子会社(50.1%保有)のファミマを完全子会社にする内容であることから、本集計の対象外だが、買付代金は5800億円に上る。TOB成立後、ファミマは上場廃止となる。