2020年6月のM&A件数(適時開示ベース)は前年同月比8件増の55件だった。6月として過去10年間で最多。ただ、海外案件は9件と2018年6月以来2年ぶりに月間1ケタにとどまり、国内回帰の構図が鮮明になったほか、案件サイズの小型化も顕著で、新型コロナ感染による慎重姿勢の広がりがうかがえる。

1~6月(上期)のM&A件数は406件で、前年同期を11件上回り、上期ベースでも過去10年で最多を記録した。上期に400件を超えるのは2009年以来。4月に件数の落ち込みが見られたものの、その後は持ち直し、増勢基調を維持した。一方、M&Aの取引金額(金額公表分のみを集計)は1兆4671億円で、前年同期(2兆1605億円)に比べ約32%減少した。

「売却」が全体の3分の1を超える

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

6月に目立ったのは売却。M&A総件数の55件中、買収36件に対して売却19件と全体の3分の1を超えた(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。海外案件では9件のうち、売却が6件を占めた。コロナ禍を受けて先行き不透明感が強まる中、ノンコア(非中核)事業や不採算事業の切り離しに向けて動きを強めたものとみられる。

経営再建中の三井E&Sホールディングスは傘下の三井E&S造船が手がける艦艇事業に関し、三菱重工業へ譲渡する方向で協議入りすると発表した。2021年10月の譲渡完了を目指す。オリンパスはデジタルカメラなどの映像事業を投資ファンドの日本産業パートナーズ(東京都千代田区)に年内をめどに譲渡する。映像事業はスマートフォンの普及などに伴い売上規模が年々縮小し、3年連続で営業赤字に陥っている。

システム開発子会社の電縁(東京都品川区)を売却するのは人材マッチング事業のクラウドワークス。買い手はSBテクノロジー。クラウドワークスは2017年11月に電縁を傘下に収めて日が浅いが、中核のマッチング事業に経営資源を集中するため、全株式を約14億4000円で譲渡する。

件数増も、小型化が止まらず

M&Aの件数は高水準にあるが、案件サイズについては3月を境に小粒となっている。今年に入り、100億円以上の大型案件は1月4件、2月8件の後、3月2件、4月1件、5月2件、6月2件。巨額に上ることが多い海外M&Aが低調なことが背景にある。

10億円以上でみた場合も6月は8件で、3カ月連続(4月4件、5月7件)で1ケタにとどまった。今春以前であれば、10億円以上は毎月コンスタントに15~20件程度で推移しており、様変わりの状況だ。

◎6月M&A:金額上位案件

1アークランドサカモト、ホームセンターのLIXILビバをTOBなどで子会社化(1085億円)
2新生銀行、ニュージーランド最大手のノンバンクUDC Financeを子会社化(515億円)
3大和工業、韓国子会社の棒鋼事業を現地同業の大韓製鋼に譲渡(41.1億円)
4日本電波工業、SAW(弾性表面波)フィルター製造子会社のNDK SAW devices(北海道函館市)を中国投資会社に譲渡(35億円)
5SBテクノロジー、クラウドワークス傘下の電縁(東京都品川区)を子会社化(14.4億円)
6テクノホライゾン・HD、AVシステムの販売・設置工事のシンガポールEscoを子会社化(13億円)
7GA technologies、中国NecX Chinaグループから中華圏向け不動産サイト「神居秒算」事業を取得(12.2億円)
8ケーヒン、自動車用空調製品製造の中国子会社「京濱大洋冷暖工業」を現地社に譲渡(11億円)
9エムジーホーム、戸建分譲のTAKI HOUSE(川崎市)を子会社化(8.9億円)
10    モブキャストHD、トヨタ車のコンプリートカー企画・開発子会社のトムス(東京都世田谷区)をT2(同)に譲渡(8億円)
11    ぱど、地域情報誌マーケティング子会社のリビングプロシード(東京都千代田区)を譲渡(譲渡先は非公表、7.5億円)
12    ウイルテック、ビジネスホンなどOA機器買取・販売のサザンプラン(東京都新宿区)を子会社化(5.9億円)
13  小島鉄工所、MBOで非公開化(5.6億円)
14  ユニチカ、プラスチック成形加工のコソフ(京都府久御山町)を経営陣などに譲渡(3.2億円)
15  オウケイウェイヴ、通訳・翻訳子会社のブリックス(東京都新宿区)をMBOで譲渡(3億円)

アークランド、LIXILビバを1085億円で買収

そうした中、突出したのがホームセンター中堅のLIXILビバを約1085億円で買収するアークランドサカモトの案件。TOB(株式公開買い付け)などを通じて完全子会社化する。アークランドは新潟県を中心にホームセンターを展開しているが、LIXILビバを取り込み、首都圏での事業を一気に拡大する。買収金額は国内企業同士のM&Aで今年最大だ。

アークランドは業界11位、LIXILビバは第6位で、小が大を飲む形だが、両社の合計売上高は3000億円を突破し、大手の一角に食い込む。アークランドは、とんかつ専門店「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングスを上場子会社に持つ。

金額2位は新生銀行。ニュージーランド最大手のノンバンク、UDC Financeを約515億円で買収することを決めた。UDCは現地大手銀行ANZ Bank New Zealandの傘下で、個人向け自動車ローン、法人向け資産担保ファイナンスなどに強みを持つ。

ニュージーランド最大手のノンバンクUDCを買収する新生銀行(東京・日本橋で)