2020年5月のM&A件数(適時開示ベース)は69件と前年同月を10件上回り、5月として過去10年で2018年(73件)に次ぐ2番目の高水準となった。4月比では19件増えた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い経済活動が停滞する中、4月に続いて5月も減少傾向が続くと見られていたが、大幅な持ち直しに転じ、M&A市場の底堅さを印象づけた。

ただ、内容をみると、海外を中心とする大型案件がほぼ姿を消し、国内案件も小型化が顕著で、コロナ禍を背景にM&Aに対する慎重姿勢がうかがえる。

10億円以上、2カ月連続で1ケタにとどまる

全上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。

5月に開示されたM&A総件数69件の内訳は買収57件、売却12件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。このうち海外案件は12件で、買収9件、売却3件だった。

4月のM&A件数は前年同月比17件減の50件と落ち込んだ。新型コロナの影響で着手済みの案件で作業の遅延などが生じたためとみられるが、件数をみる限り、5月は復調した形だ。1~5月のM&A件数は351件と前年水準(348件)をキープしている。一方、案件サイズは10億円以上が7件(4月は4件)と、2カ月連続で1ケタにとどまった。

M&Aは一般的なケースで取引完了までに4カ月から半年程度かかるが、新規案件については3月以降、一部に様子見が広がっている。このため、7月以降は案件が枯渇する恐れもある。

ニチイ学館、ベインキャピタルと組んでMBO

金額トップはMBO(経営陣が参加する買収)を通じて非公開化するニチイ学館の案件。米投資ファンドのベインキャピタルがニチイ学館に対してTOB(株式公開買い付け)を行い、全株取得を目指す。買収金額は筆頭株主で約25%を所有する創業家の資産管理会社からの株式買い取りを含めて総額約990億円。TOB期間は5月11日~6月22日。

ニチイ学館は1968年に創業し、医療事務受託を開始。1973年に保育総合学院(75年にニチイ学館に社名変更)を設立し、99年に東証2部に上場(2002年に1部に昇格)。現在、祖業の医療事務受託事業と介護事業で業界首位に立つ。人手不足が深刻化し、安定的な人材供給体制の構築が最大の経営課題となる中、成長分野への展開など大胆な改革を推し進めるためには非公開化が望ましいと判断した。

SBSホールディングスは199億円を投じて、東芝グループの物流を担う東芝ロジスティクス(川崎市)の株式66.6%を取得し子会社化する。メーカー系物流会社のM&Aは2年連続。昨年はリコー傘下のリコーロジスティクス(現SBSリコーロジスティクス)を180億円で子会社化した。

100億円以上の大型案件は今年に入り、1月4件、2月8件だったが、3月2件、4月1件、5月2件で推移。海外M&Aが低調なことが背景にある。

そうした中、取引金額42億6000万円の比較的大きな案件を手がけたのは西本Wismettacホールディングス。マグロ・サーモン輸入・加工会社のフランスCOMPTOIRS DES 3CAPSを7月に子会社化する。欧州で日本食やアジア食の需要が膨らんでいるのに対応し、英国、ドイツに続く事業拠点を確保するのが狙いだ。