【ルネサスエレクトロニクス】撤退戦から「反撃の買収戦」に挑む

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純資産を上回る「のれん」

これを嫌気して産業革新機構が2019年6月に呉CEOを退任させ、後任として2012年8月に日立と日産のフォークリフト事業を統合してユニキャリア(現三菱ロジスネクスト)<7105>を立ち上げた産業革新機構出身の柴田英利社長兼CEOが就任した。

柴田社長兼CEOは呉前社長兼CEOの片腕としてインターシルとIDT買収を陣頭指揮している。2021年にはアナログ半導体を手がける英ダイアログ・セミコンダクターを約6157億円で買収すると発表し、M&Aによる成長路線を堅持する構えだ。

M&Aによる成長戦略と世界的な半導体不足による好調な需要を受けて、ルネサスの株価は上昇している。9月27日には年初来最高値となる1477円をつけた。株式市場はルネサスのM&Aを好感している。

とはいえ、ルネサスの前途は多難だ。この5年間の巨額M&Aに伴う「のれん」代は、ルネサスの純資産9758億円を上回る1兆円超に達している。ルネサスは国際会計基準(IFRS)を採用しており、のれんを償却する必要はない。その代わり、のれんの「根拠」となる収益力や両社のシナジーが毀損していないかを確認する「減損テスト」が課される。

テストの結果、「のれんの価値がない」と判定されると、一気に減損しなくてはならない。仮にのれんの大幅な減損処理を迫られた場合、債務超過に陥る可能性もある。ルネサスのM&Aによる成長戦略が成功するかどうかは、巨額買収した3社の業績とルネサスとのシナジー効果にかかっている。

買収した子会社とのシナジー効果を生かせるか?(同社ホームページより)

M&A Online編集部

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