企業買収や事業譲渡などのM&Aに縁遠かった東京ガス<9531>が一転、2020年7月に2件のM&Aに踏み切った。 

一つは米国の再生可能エネルギー開発事業者のヘカテエナジー(イリノイ州)がテキサス州で進めている大規模太陽光発電事業(最大出力63万キロワット)の取得で、もう一つはガス開発の米合弁企業キャッスルトン・リソーシズ(テキサス州)の子会社化だ。 

東京ガスグループが建設から事業運営までを手がける海外太陽光発電事業はこれが初めてであり、米ガス事業の開発・生産会社を傘下に収めるのもこれが初めて。 

なぜ、東京ガスは不慣れなM&Aを活用してまで、こうした新たな事業に乗り出そうとしているのか。その答えは2019年11月に策定した経営ビジョン「Compass2030」の中に見出すことができる。 

Compass2030は決意の表れ 

Compass2030は「次の半世紀を見据え、不確実な時代に進むべき方角を示す羅針盤」との位置づけで、新たな挑戦に立ち向かう決意を示すものであるという。 

東京ガスは化石燃料である天然ガスを扱う企業として、気候変動と真摯に向き合っていくことが責務であると考えており、再生可能エネルギーをはじめとする新しい技術と天然ガスを組み合わせて活用していく計画だ。 

東京ガス本社ビル(東京都港区)

こうした実態を踏まてCompass2030の中には「再生可能エネルギーと天然ガスの調和」「脱炭素化技術のイノベーション」「暮らしやビジネスの課題解決」「天然ガスを活用したレジリエンス(回復力)機能の強化」「海外への展開」の5つのアクションプランを盛り込んだ。 

M&Aで取得した太陽光発電事業、ガス事業はいずれも5番目の「海外への展開」にあたる。同プランではガス、電力の供給や再生可能エネルギー事業の取り込みなどで事業を多様化し、海外事業の利益を現在の3倍に拡大することを目標に据える。 

その具体的な内容が、成長エンジン型投資(事業会社に出資し、経営に関与することで事業会社を成長させる取り組み)により、加速度的に事業を拡大することなどであり、まさに2件のM&Aはこの目標を実現するのにぴったりの取り組みと言える。