漢方薬国内最大手のツムラ<4540>が、12年ぶりにM&Aに踏み切った。2020年3月に約187億円を投じて、漢方製剤用原料の調達先である中国の天津盛実百草中薬科技有限公司(天津市、盛実百草)の株式の80%を取得し子会社化したのだ。 

12年前のM&Aは入浴剤や育毛剤を製造するツムラライフサイエンスの全株式をMBO(経営陣による買収)により売却する案件だったため、上場企業に義務づけられた東証適時開示情報に該当する企業買収は今回が初めてとなる。 

同社の売上規模は1200億円ほど。180億円を超える投資は決して小さな額ではない。事実2020年3月期には取得金額と買収企業の純資産額の差額である「のれん」の金額として約120億円を計上、今後20年間で均等償却する。 

120億円もののれん代を支払ってでも盛実百草を傘下に収めたかったのはなぜなのか。そこには将来の発展に関わる戦略があった。 

生薬の最先端企業を目指す 

盛実百草は2011年に設立された中薬材(中国の伝統医学で用いる薬剤)や飲片(刻み生薬)の生産、販売を手がける企業で、ツムラが公表した資料によると、2016年から2018年の3年間は増収増益を達成している。直近の2018年は売上高143億9300万円(前年度比32.4%増)、営業利益17億円(31.0%増)、経常利益18億800万円(同23.2%増)、当期利益18億800万円(24.4%増)で、売り上げ、利益とも大きく伸びた。 

ツムラとの取引は2011年の設立当初からあり、ツムラ向けの売上高がこの3年間はいずれも全売上高の70%を超えている。2016年に両社は業務提携し、日本への輸出用原料生薬の安定供給体制の強化や中国事業の拡大、中国事業用原料生薬の安定供給体制の強化などについて連携してきた。 

2018年3月には中国天津市に合弁会社(津村盛実製薬有限公司)を設立し、漢方製剤の中間体の漢方エキス粉末や中成薬(中国の伝統医学で用いる薬剤を工業的な方法で製剤化した薬物)事業への参入準備を進めていた。こうした状況の中、重要なノウハウの共有などを考慮し、盛実百草の子会社化に踏み切った。 

今後、ツムラが持つ漢方・生薬事業のノウハウと盛実百草が持つ固有ノウハウを共有するとともに、技術や販路などで連携し、これら取り組みで生薬や関連分野の最先端企業を目指していくという。 

【天津盛実百草中薬科技有限公司の業績推移】単位:億円

  2016年 2017年 2018年
売上高 101.57 108.68 143.93
営業利益 9.58 12.98 17
経常利益 12.67 14.68 18.08
当期利益 12.67 14.53 18.08