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2022年、最も多くのM&Aを手がけた上場企業はどこ?
全国で3900社近くを数える上場企業のうち、2022年に最も多くのM&Aを手がけたところはどこか? M&A Onlineが適時開示情報をもとに調べてみた。
2023年1月のM&A件数(適時開示ベース)は93件と前年同月を29件上回り、好調な滑り出しとなった。前年比プラスは6カ月連続。年明け1月として過去10年で最多となった。国内案件が活況を維持したのに加え、海外案件も2ケタ台で推移した。
一方、取引金額は1352億円(公表分を集計)で、昨年7月(623億円)以来の低水準。件数が大幅に伸びた半面、100億円を超える大型案件が2件にとどまり、金額は振るわなかった。
上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。
1月のM&A93件の内訳は買収76件、売却17件(買収側、売却側の双方が発表したケースは買収側でカウント)。年明け1月の件数レベルは例年、それほど高いわけではない。過去10年間でみると、コロナ禍の影響が広がる直前の2020年1月の74件が最多で、これに前年64件が続いていたが、2023年はさらに勢いを増し、ロケットスタートの様相を呈した。
93件中、国境をまたぐ海外案件は14件。なかでも外国企業が買い手となるインバウンド取引が8件と半数以上を占め、その大部分は海外における子会社・事業の譲渡だ。
アステラス製薬は抗真菌剤「ファンガード」の製造販売権をスイス企業に約98億円で、日本ハムは食肉処理のウルグアイ子会社BPUをブラジル企業に52億円で、それぞれ譲渡する。金額非公表ながら、南米ボリビアにおける「サンクリストバル銀・亜鉛・鉛鉱山」運営子会社をカナダ企業に譲渡するのは住友商事。いずれも事業ポートフォリオの見直しを通じた経営資源配分の最適化を目的とする。
日本企業が買い手のアウトバウンド取引で最も大きいのは、オキサイドがイスラエルの光学結晶メーカーRaicol Crystalsを子会社化する案件で、36億1000万円。
金額トップは三井物産によるTOB(株式公開買い付け)案件。最大602億円を投じて、持ち分法適用関連会社でコンタクトセンター事業を主力とする、りらいあコミュニケーションズを完全子会社化する。
三井物産はりらいあの株式36%余りを保有する筆頭株主。TOB成立後、りらいあは今年7月をめどに、KDDI傘下で同じくコンタクトセンター事業を手がけるKDDIエボルバ(東京都新宿区)と経営統合を予定している。
インパクトホールディングス(HD)は米投資ファンドのベインキャピタルと組み、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化する。買付代金は最大272億円。
インパクトHDはスーパーなど小売業の店頭マーケティング事業を主力とするが、コロナ禍を受けて販促活動のデジタルシフトの動きが強まるなど市場環境が大きく変化している。こうした中、短期的な業績にとらわれず、思い切った成長戦略を推し進めるためには非公開化が必要との判断だ。
業種別で1月に目立ったのは介護関連で、6件に上った。このうち、LITALICOはリハビリ型デイサービスを手がけるnCS(東京都豊島区)の全株式を8億5000万円で取得した。リビングプラットフォームは高齢者グループホームを運営する橙果舎(札幌市)、エコ(福島県郡山市)の2社を傘下に収める(金額非公表)。
地場警備会社をターゲットとする買収も散見された。トスネットは交通誘導警備や雑踏警備のトップロード(新潟市)の全株式を5億8000万円で取得。また、共栄セキュリティーサービスは施設警備、交通誘導警備を主力とする合建警備保障(徳島市)の子会社化を決めた。
◎1月M&A:金額上位(10億円以上) ※HDはホールディングスの略
1 | 三井物産 | りらいあコミュニケーションズをTOBで子会社化 | 602億円 |
2 | インパクトHD | MBOで株式を非公開化 | 272億円 |
3 | アステラス製薬 | 抗真菌剤「ファンガード」製造販売権をスイス製薬企業のサンドに譲渡 | 97.6億円 |
4 | WOW WORLD GROUP | 日本成長投資アライアンスがWOW WORLD GROUPにTOBを行い、株式を非公開化 | 74.6億円 |
5 | Macbee Planet | ネット広告事業のネットマーケティングを子会社化 | 54億円 |
6 | 日本ハム | 食肉処理のウルグアイ子会社BPUをブラジルMinervaに譲渡 | 52億円 |
7 | オキサイド | 光学結晶メーカーのイスラエルRaicol Crystalsを子会社化 | 36.1億円 |
8 | ローチェ | 分析装置メーカーのイアス(東京都日野市)を子会社化 | 29.8億円 |
9 | サインド | 美容予約一元管理システム提供のパシフィックポーター(東京都渋谷区)を子会社化 | 28.7億円 |
10 | 三井松島HD | 丸紅傘下でレジロール用記録紙大手の丸紅オフィス・サプライ(東京都千代田区)を子会社化 | 23.5億円 |
11 | Abalance | 太陽光発電のフレックスホールディングス(水戸市)を子会社化 | 13.6億円 |
12 | SHIFT | ソフト開発・ITインフラ構築のキャリアシステムズ(東京都港区)を子会社化 | 11.7億円 |
13 | インパクトHD | コロワイド傘下のワールドピーコム(横浜市)から外食産業向けセルフオーダーシステム事業を取得 | 10.5億円 |
文:M&A Online編集部
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全国で3900社近くを数える上場企業のうち、2022年に最も多くのM&Aを手がけたところはどこか? M&A Onlineが適時開示情報をもとに調べてみた。