100億円超の大型M&A、6年ぶりに年間80件を上回るハイペース

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写真はイメージです(写真は東京・大手町)

取引金額が100億円を超える大型M&Aの件数がハイペースで推移している。1~9月段階で前年比8件増の63件と、このままいけば、2022年は2016年(87件)以来6年ぶりに年間80件を上回る見通しだ。1000億円超の案件は今のところ7件と、前年(19件)の半数以下にとどまる半面、数百億円規模の案件が積み上がっている。

M&A Online編集部は上場企業の適時開示情報に基づき、経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)の件数・金額などについて、2008年以降のデータを集計している。

「数百億円」規模が積み上がる

2022年1~9月のM&A件数は前年比37件増の693件。内訳は日本企業同士の国内案件が前年比40件増の575件、外国企業を相手とする海外案件が同3件減の118件。国内案件が活発に推移し、ウクライナ危機や円安進行などで慎重姿勢が広がっていた海外案件も8、9月と持ち直しの動きが広がっている。

一方、1~9月の取引金額は総額4兆3337億円(公表分を集計)と前年の7兆2004億円を4割下回る。

前年は日立製作所による1兆円超の案件を筆頭に、8000億~6000億円台も4件あり(いずれも海外案件)、これらを含めて1000億円超の大型案件が19件を数えた。これに対して、今年は金額トップがソニーグループの5140億円で、1000億円超の大型案件は7件にとどまる。

しかし、100億円超でみると、事情が大きく異なる。1~9月は前年比8件増の63件(国内案件30、海外案件33)で、これまでにないハイペースで件数を積み上げている。コロナ初年の2020年との比較では30件増で、同年の年間件数(51件)をすでに超えた。

2022年は1~9月の集計。適時開示ベース

2016年を上回るハイペース

100億円超のM&A件数が年間87件に上った2016年のペースも上回っている。2016年は1~9月段階で48件で、10月からの3カ月間で集中的に件数を稼いだ。

例年、第4四半期(10~12月)に件数、案件規模とも膨らむ傾向がある。2022年は現行のペースで維持すれば、6年ぶりの80件超えはほぼ確実で、90件をうかがう可能性もある。

◎2022年1~9月M&A:金額上位30

社名 内容 金額 発表
1 ソニーグループ 米ゲーム開発会社バンジーを子会社化 5140億円 2月
2 日立物流 米KKRが日立物流をTOBで非公開化。日立は10%を再出資 4442億円 4月
3 オリンパス 祖業の顕微鏡など科学事業を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡 4276億円 8月
4 横浜ゴム スウェーデンの農機タイヤメーカー「トレルボルグ」を子会社化 2672億円 3月
5 近鉄グループホールディングス 近鉄エクスプレスをTOBで子会社化 1680億円 5月
6 三菱商事 不動産運用子会社の三菱商事・ユービーエス・リアルティ(東京都千代田区)を米KKRに譲渡 1157億円 3月
7 東芝 空調事業子会社の東芝キヤリア(川崎市)を合弁相手の米キヤリアに譲渡 1000億円 2月
8 日本製鉄 タイの電炉メーカー大手のGスチールとGJスチールを子会社化 880億円 1月
9 第一生命ホールディングス ニュージーランド生命保険大手パートナーズ・グループを子会社化 856億円 8月
10 リコー 富士通傘下でスキャナー大手のPFU(石川県かほく市)を子会社化 842億円 4月
11 ニコン ドイツの3Dプリンター大手SLMソリューションズ・グループを子会社化 840億円 9月
12 ATホールディングス MBOで株式を非公開化 828億円 2月
13 日東電工 英包装・製紙大手のモンディから衛生材料事業を取得 804億円 2月
14 積水ハウス 米国の戸建住宅会社チェスマーホームズを子会社化 687億円 6月
15 エイチ・アイ・エス 大型リゾート施設「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)を香港投資ファンドのPGAに譲渡 666億円 8月
16 ミライト・ホールディングス 西武ホールディングス傘下の西武建設(東京都豊島区)を子会社化 620億円 1月
17 関西ペイント アフリカの塗料子会社2社をオランダ化学大手のアクゾノーベルに譲渡 585億円 6月
18 インフロニア・ホールディングス [不成立]海洋土木の東洋建設をTOBで子会社化 579億円 3月
19 キトー 吊り具メーカーの米クロスビーと経営統合(クロスビー側がTOBを実施) 564億円 5月
20 MS&ADインシュアランスグループホールディングス 米国の再保険仲介トランスバースを子会社化 542億円 8月
21 シノケングループ 国内投資ファンドのインテグラルと組んでMBOで株式を非公開化 533億円 8月
22 三井化学 フェノール事業のシンガポール子会社を英国INEOSに譲渡 450億円 8月
23 アクセンチュア(東京都港区) データソリューション事業のALBERTをTOBで子会社化 424億円 9月
24 大豊建設 九州の企業グループ「麻生」(福岡県飯塚市)の傘下に 403億円 3月
25 スクウェア・エニックス・ホールディングス ゲーム開発の海外子会社2社とソフト資産の一部をスウェーデンEmbracer Groupに譲渡 389億円 5月
26 タカラレーベン タカラレーベン・インフラ投資法人をTOBで非公開化 353億円 9月
27 東京海上ホールディングス 台湾4位の合弁損害保険「新安東京海上」を子会社化 338億円 8月
28 村田製作所 通信部品開発・設計の米レゾナントを子会社化 336億円 2月
29 SOMPOホールディングス ブラジル子会社の保険事業をドイツ保険大手Talanxに譲渡 319億円 5月
30 香港オアシス・マネジメント 投資用不動産販売のレーサムをTOBで子会社化 312億円 9月

文:M&A Online編集部

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