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【人材サービス分野のM&A】3年連続の27件、高水準をキープ|じげん、トップの4件を手がける
2022年の人材サービス業を対象とするM&A件数は前年と同じ27件だった。実は27件は3年連続。過去10年で最多だった2018年の30件には届かなかったものの、高水準をキープしている。コロナ後を見据え、経済活動が正常化に向かう中、ITエンジニアをはじめ物流、不動産関連など専門人材に対するニーズの高まりが旺盛なM&Aにつながっている。
2022年12月のM&A件数(適時開示ベース)は84件と前年同月を10件上回り、5カ月連続で増加した。国内案件が増勢を維持し、海外案件も年間2番目の高水準で推移した。1~12月累計は前年比72件、率にして8.2%増の949件で、前年(877件)に記録したリーマンショック(2008年)後の最多を大幅更新した。
一方、12月の取引金額(公表分を集計)は9943億円と1兆円に迫り、月別で年間最高だった。武田薬品工業が約5485億円を投じて米国の創薬企業を買収する案件が金額を押し上げた。ただ、年間累計は前年比24%減の6兆5612億円。2015年(6兆1831億円)以来の低水準で、件数が積み上がった割に金額は伸び悩んだ。
上場企業に義務づけられた適時開示情報のうち経営権の異動を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Online編集部が集計した。
12月のM&A84件の内訳は買収65件、売却19件(買収側、売却側の双方が発表したケースは買収側でカウント)。84件のうち国境をまたぐ海外案件は18件で、年間を通じて8月(21件)に次ぐ件数を稼いだ。
12月の金額首位は武田薬品。米国の創薬企業ニンバス・セラピューティクスの子会社「ラクシュミ」を40億ドル(約5485億円)で買収する案件は2022年全体でもトップに立つ。ラクシュミは皮膚病の一種の乾癬(かんせん)や炎症性腸疾患などの免疫疾患に有効性が期待される新薬候補を持つ。2023年3月末までに買収完了を見込む。武田は2019年1月に6兆2000億円でアイルランド製薬大手のシャイアーを買収したが、これ以来の大型M&Aとなる。
武田はシャイアー買収で膨らんだ有利子負債を圧縮するため、ここ数年はビタミン剤「アリナミン」や風邪薬「ベンザ」で知られる大衆薬事業を2000億円超で売却するなど、非中核事業の切り離しに専念していた経緯がある。
日本製鉄は系列専門商社の日鉄物産をTOB(株式公開買い付け)で子会社化すると発表した。買付代金は最大約1366億円。日鉄は日鉄物産株の35%強(間接所有を含む)を所有する筆頭株主。TOBを通じて、第2位株主の三井物産の所有分20%を除く約45%の株式を買い付け、所有割合を80%とする。
国内需要の減少や顧客企業の現地生産拡大、中国との競争激化など鉄鋼業界を取り巻く市場環境の変化に対応し、国内外の需要家との直接の接点を増やすなど、製造から流通にいたるサプライチェーン(供給網)全体での競争力強化につなげる。2月下旬をめどにTOBを始める。
日鉄はインド、ASEAN(東南アジア諸国連合)などの需要地で一貫生産体制の構築に向けて、近年、M&Aにアクセルを踏み込んでいる。2019年12月に欧州鉄鋼最大手のアルセロール・ミタルと共同で、インド5位の鉄鋼メーカーを約7700億円で買収(日鉄は4割出資)。さらに2022年2月にタイの電炉大手を約880億円で傘下に収めた。
これが、M&A(企業の合併・買収)とM&Aにまつわる身近な情報をM&Aの専門家だけでなく、広く一般の方々にも提供するメディア、M&A Onlineのメッセージです。私たちに大切なことは、M&Aに対する正しい知識と判断基準を持つことだと考えています。M&A Onlineは、広くM&Aの情報を収集・発信しながら、日本の産業がM&Aによって力強さを増していく姿を、読者の皆様と一緒にしっかりと見届けていきたいと考えています。
2022年の人材サービス業を対象とするM&A件数は前年と同じ27件だった。実は27件は3年連続。過去10年で最多だった2018年の30件には届かなかったものの、高水準をキープしている。コロナ後を見据え、経済活動が正常化に向かう中、ITエンジニアをはじめ物流、不動産関連など専門人材に対するニーズの高まりが旺盛なM&Aにつながっている。