M&A件数は微減も、取引総額は大幅減 2022年の製造業界

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製造業のM&Aは振るわず(写真はイメージ)

2022年(12月6日現在)の製造業におけるM&Aは、件数が前年比2.90%減の201件(前年は207件)で、2年ぶりの減少となったが、2年連続で200件台に踏みとどまった。一方、取引総額は同44.9%減の約1兆9468億円(前年は約3兆5382億円)で2年連続の減少に。国内M&A市場全体が成長する中、件数・取引総額ともに過去10年で下から3番目と振るわなかった。

景気の先行き不透明感増大で大型案件が減少か?

取引総額が40%を超える激減となったのは件数減もさることながら、大型案件の減少が大きかった。2021年に最も取引総額が高かったオリンパスの「科学事業」も、2020年であれば3位にすぎない。

1000億円超の大型案件は3件と、前年の8件を大きく下回った。ウィズコロナの流れは見えてきたものの、輸出先となる欧米先進国では急激なインフレが進み、日本でも物価上昇が著しい。景気の先行き不透明感が増したことから、国内製造業がM&Aに慎重になった可能性がありそうだ。

クロスボーダー取引は62件と、製造業全体の32.1%を占めている。日本企業による外国企業の買収(IN-OUT案件)は30件、外国企業による日本企業の買収(OUT-IN案件)は32件だった。取引総額上位10件のうち9件がクロスボーダーM&Aで、外国企業絡みのM&Aが高額となる傾向が続いている。

このまま円安が進めば、外国企業にとって買収価格が割安になるうえ、日本からの輸出には有利なこともあり、外国企業による日本の製造業のM&Aが加速する可能性が高い。

最も取引総額が高かったのはオリンパス<7733>が8月29日に発表した、祖業の顕微鏡など「科学事業」を米投資ファンドのベインキャピタルに約4276億円で譲渡した案件。ベインキャピタルは2021年にも日米連合で日立金属を約8100億円で買収している。製造業の取引総額では2年連続でトップとなり、存在感を示した。

2番目は横浜ゴム<5101>が3月25日に発表したスウェーデンの農業機械用タイヤメーカー「トレルボルグ」を2672億円で子会社化した案件。横浜ゴムは2021年に自動車・建築用シーリング材やウレタン防水材などで構成する「ハマタイト事業」を、スイス化学メーカーSika AGの日本、米国、中国、タイにある4子会社に売却したが、2022年は「買い」に回った。

3番目は東芝<6502>が2月7日に発表した、空調子会社の東芝キヤリアの持ち分60%のうち55%を約1000億円で合弁相手の米キヤリアに譲渡した案件。これにより東芝キヤリアは連結対象外となるが、売却後も東芝ブランドの空調システムを開発・製造・販売する。

東芝はTOB(株式公開買い付け)で上場を廃止して経営の主導権を取り戻す考えで、TOB資金の融資を受ける金融機関から子会社売却による財務改善を求められている。2023年はTOBの実施に向けて、東芝の子会社売却が加速しそうだ。

M&A Online編集部

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