ファンドが積極的に買い 2022年の上場企業による子会社・事業の売却

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写真はイメージです

2022年に上場企業が子会社や事業を売却した件数が253件に上り、金額は2兆5869億円に達したことが分かった。

M&A Onlineが「M&Aデータベース」で調べたもので、売却の目的は財務体質の強化や中核事業への経営資源の集中、さらにはROE(自己資本利益率=自己資本に対する当期利益の比率)の改善などだった。

売り手の最多はIT・ソフトウエア

上場企業が子会社や事業を売却した件数は、コロナ禍初年度の2020年に過去最多となり、2021年は2年連続で過去最多を更新していた。2022年はこの両年には届かなかったものの、2013年以降の10年間では3番目の件数となった。

金額は1兆円を超える大型の案件がなく、前年の70%ほどに留まった。さらに前々年の2020年と比べると半分ほどに縮小しており、小型化の傾向が表れた。

売り手企業の業種を見ると、IT・ソフトウエアが最も多い26社となり、次いで総合商社と専門商社を合わせた商社の20社、化学の19社と続いた。

一方、買い手企業の業種は海外の投資ファンドなどの、その他金融が最も多く26社となった。次いでその他サービスの21社、IT・ソフトウエアの15社の順だった。IT・ソフトウエアや商社、化学などが抱える業績の悪化した子会社や事業を、ファンドが積極的に買収している姿が浮かび上がった。

ファンドの金額トップはベイン

そのファンドがからんだ案件を見てみると、売却金額上位10件中2位、3位、5位、9位と4件を占めた。

オリンパスが祖業の顕微鏡や非破壊検査機器、X線分析計などから成る「科学事業」を米投資ファンドのベインキャピタルに4276億円で売却した案件が最も金額が膨らんだ。

オリンパスは1919年に顕微鏡の国産化を目的に、高千穂製作所として創業。その後、カメラや内視鏡に進出し、総合光学メーカーとして発展した。業績低迷に伴い、すでにカメラを中心とする映像事業から撤退しており、今後は内視鏡事業、治療機器事業を中心とする医療分野に経営資源を集中させる計画だ。

セブン&アイ・ホールディングスが、赤字経営が続いていた百貨店の「そごう・西武」を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却する案件も話題を呼んだ。売却は2023年3月中に実施する予定で、最終的な売却額は企業価値を2500億円とし、有利子負債などを調整したうえで確定する。

このほかに三菱商事が不動産運用子会社「MC-UBSR」を米投資ファンドのKKRに1157億円で売却した案件と、エイチ・アイ・エスが大型リゾート施設「ハウステンボス」を香港投資ファンドのPAGに666億円で売却した案件があった。

クロスボーダーは過去10年で2番目に

投資ファンドへの売却と並んで、海外の子会社や事業を現地企業に売却する動きも目立った。2022年に海外企業が買い手となったクロスボーダーは54件あり、前年よりも9件減少したものの、過去10年では前年に次ぐ2番目の件数になった。

コロナ禍初年度の2020年も海外企業が買い手となったクロスボーダーは45件あり、過去10年間では3番目の件数で、この3年間で海外の子会社や事業の売却が大きく進んだことが分かる。

全体の金額トップもクロスボーダーで、丸紅が傘下の米穀物大手ガビロンを再編してカナダの同業大手バイテラに4300億円で譲渡した案件だった。

2023年も高水準で推移か

新型コロナウイルス感染者数は依然として多いものの、世界では感染対策の緩和が進んでおり、日本でも入国制限を撤廃するなど経済活動の正常化に向けて動き出している。

このため2023年はコロナ前の状況に近づくことが予想されるものの、政府などによるコロナ支援策が縮小することもあり、企業の業績が悪化することも見込まれる。

上場企業による子会社や事業の売却は、2023年も引き続き高水準で推移する可能性は高そうだ。

文:M&A Online編集部

M&A Online編集部

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