楽天<4755>の携帯電話キャリアの参入で、にわかに活気づいてきた携帯電話業界。今回は、携帯電話キャリアの大手3社(というより、寡占3社)のうち、auの現状をみていこう。

「au経済圏」を高らかに掲げるKDDI

 auという携帯電話キャリアの会社はなく(正確にいうと2000年11月に当時のセルラーグループ7社が合併し、株式会社エーユーとして存在していたが、翌2001年にKDDIに吸収合併され、解散)、auはKDDIの携帯電話の「ブランド」という位置づけになる。そこで、KDDI<9433>の会社の現状を見ていく。

 KDDIはいま、2017年3月期から2019年3月期の3カ年計画の真っただなかにある。その3カ年計画では、「『お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革』を事業運営方針として、『持続的な利益成長と株主還元強化の両立』を通じ、企業価値のさらなる向上をめざす」としている(同社ホームページより)。

「お客さま体験価値を提供するビジネスへの変革」を、「KDDIが何を狙っているのか」の視点に置き換えると、それは「au経済圏の最大化」と「グローバル事業の積極展開」ということになるだろう。「au経済圏」とは、「au(というブランド)を取り巻く従来の通信サービスに加え、決済・物販・エネルギー・金融サービスなどをauライフデザインとして総合的に提供する新たな経済圏」ということができる。そのau経済圏の最大化をめざしていくということだ。

 こういっては誤解が生じるかもしれないが、auの携帯電話は、まさにドラえもんの「四次元ポケット」や「どこでもドア」のような存在をめざしているのかもしれない。また、それは、楽天が標榜する「楽天経済圏」のようなものであるかもしれない。いずれにせよ、「○○経済圏」という表現は、携帯電話が私たちの生活において、無限の可能性を秘めていることを感じさせる。

金融系とIoT(Internet of Things)領域の企業買収を積極攻勢

 Au経済圏の最大化でめざすものは、通信企業というよりむしろ、ライフデザイン企業といったものだ。その実現にはM&Aが大きな役割を果たす。

 そのM&Aに要する額は、この中期計画の3年間で5000億円規模になるという。その実現に向けてこれまで行ってきたM&A、2017年に行われたでM&Aで特徴的なのは、金融系とIoT(Internet of Things=モノのインターネット。インターネットに、パソコンやサーバー、プリンタなどのIT関連機器とは異なる、さまざまなモノを接続すること)領域の企業の買収だ。

 金融系では2011年に196億円をかけてウェブマネーをTOB株式公開買付け)で買収し、2015年にライフネット生命に出資した(出資比率は当初15.64%。現在約25%)。ライフネット生命に出資した当時、KDDIは「2015年2月にカードの申込み数が累計1000万件を突破した『au WALLET』や『au ID』を起点として、金融ビジネスをさらに推進し、金融事業領域での事業拡大をめざすとともに、auの商品・サービスと融合した従来にない新たな金融サービスを提供する」としている。

 また、IoT領域におけるM&Aの代表例が2017年8月のソラコムの買収(連結子会社化)である。ソラコムの従業員数は約40人で、創業3年のベンチャー。買収に要する金額は約200億円といわれている。

 KDDIはこの買収について、ニュースリリースで次のように語っている。

「ソラコムは2015年9月の国内でのサービス開始後、米国・欧州でもサービスを開始し、120を超える国と地域で利用可能となっている。KDDIは今後、さらなるIoTの普及拡大に向け、IoTビジネス基盤の整備を積極的に進める。KDDIのIoTビジネス基盤とソラコムの通信プラットフォームの連携により、国内はもとよりグローバルにも通じるIoTプラットフォームの構築を強力に推進していく」

 まさに、新進気鋭のベンチャーを傘下に収め、飛躍の大きな足がかりとしたい思惑が感じられる

今後、注目されるUQモバイルとの関係

 ここにきて、KDDIが注目を集めるのは、UQモバイルとの関係だ。UQモバイルは、KDDIによる無線データ通信の事業化を目的として、2007年にワイヤレスブロードバンド企画株式会社(KDDI100%子会社)として設立。同年、第三者割当により、Intel Capital、東日本旅客鉄道、京セラ、大和証券グループ本社、三菱東京UFJ銀行などが資本参加し、翌2008年に社名を現在のUQコミュニケーションズに変更した。

 一言でいうと、UQモバイルは親会社をKDDIとするUQコミュニケーションズのMVNO(仮想移動体通信事業者)のブランド。いわゆる“格安スマホ”で、UQモバイルはKDDIから回線の提供を受けている。

 その特徴は、KDDIの回線のみを使用していることで得られる圧倒的に速い通信速度。また、販売面でもauと協力し、一体的な取り組みを進めている。特に、最近は家電量販店での販売連携を進め、KDDIでは2016年夏時点で「家電量販1000店で『UQ mobile』を展開する」とした。

 機能面では2017年2月、UQモバイルは、1回5分以内の国内通話であれば何回でもかけ放題で利用できる「おしゃべりプラン」の提供を始めた。大手携帯電話キャリア3社よりも安く、他の“格安スマホ”よりも安心感がある価格と価値のバランスを実現することで、携帯電話市場の「第3極」をめざす。これもKDDI傘下にあってこその成果だろう。

なぜ急激に、UQモバイルのてこ入れを始めたのか?

 KDDIがUQモバイルのてこ入れを急激に積極化する――、その最大の理由は、携帯電話キャリア大手3社のなかで、KDDIは他の2社の後塵を拝したからだといった見方がある。

 たしかに、NTTドコモ<9437>はKDDIより一足早くMVNO事業者にネットワークを提供し、2016年には「dマーケット」というコンテンツサービスで販売連携を強めている。ソフトバンクは2014年に「Y mobile!(ワイモバイル)」ブランドで低価格路線を明確に打ち出した。さらに、3社以外の“格安スマホ業界”各社も急速に市場に浸透している。その点、KDDIは主要な通信ブランドであるauを軸に、よりauのシェアを市場に浸透させたいという意図が強かったのかもしれない。

 だが、ここにきて、KDDIは上記の「第3極」の確立に向けて大きく舵を切った。この方針転換はどこまで成果を上げ得るのか、それは、携帯電話本来の電話・通話機能ではなく、携帯端末としての通信機能によるところが大きい。いわば、格安スマホの原点ともいえる通信にいったんは立ち戻り、その無限の多様性、本当の可能性があらためて問い続けるということだ。

文:M&A Online編集部