損保業界が介護事業の主役に?

 2000年にスタートし、3年ごとに改正されてきた介護保険制度。2018年には、これまでの2割負担の人のうち、「特に所得の高い層」の負担割合が3割になる。介護をめぐる情勢の変化への対応に、介護事業者側も目の放せない状況が続く。

 そのなかで、「え? この会社って、あのグループだったの?」と思わず驚かずにはいられない、意外なM&Aがある。買収の狙い、そしてそこから見えてくるものとは…?

 SOMPOホールディングス、ワタミの介護を買収 (2015年)

(買収金額 約210億円 出資比率 約100%、買収時期 2015年10月)

 損害保険業界3位(2017年3月期売上3兆4,195億円)のSOMPOホールディングス<8630>(当時、損保ジャパン日本興亜ホールディングス)は2015年10月、大手居酒屋チェーンワタミ<7522>の子会社である介護サービス事業会社「ワタミの介護」の発行済株式のすべてを取得し完全子会社化し、2015年12月「SOMPOケアネクスト」と社名変更して営業を開始した。

 SOMPOホールディングスの介護事業の参画は2012年、有料老人ホームにデイサービス・訪問看護をあわせた複合サービスを提供しているシダーのTOBに始まる。以降、介護事業を「損害保険事業」「生命保険事業」に次ぐ柱と育てるべく、M&Aを軸とした事業育成を加速してきた。

年月SOMPOホールディングスのM&A
2012年9月シダーに投資事業有限責任組合を通じて出資(34%)
2015年3月介護事業者であるメッセージとの資本・業務提携(3.5%出資)
2015年12月ワタミの介護を完全子会社化
2016年3月メッセージの子会社化(94.63%出資)

 ワタミの介護の子会社化で売上高は介護業界3位へ、メッセージを子会社化したことで、それを合算すると実質2位の事業規模となっている(2017年3月期売上高1,191 億円)。

 高齢化と人口減少により、損害保険事業は国内では今後それほどの伸びしろは見込みにくい。東京海上ホールディングス<8766>、三井住友海上保険とともに、メガ3社とも海外への進出は積極的で、海外企業の大型M&Aが相次いだ。

 業界1位の東京海上ホールディングスは2015年10月、英国HCCインシュアランス・ホールディングスを約9,400億円で買収、2位のMS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725>傘下の三井住友海上保険は2016年2月、英国のアムリンを約6,400億円で買収。3位のSONPOホールディングスも例外でなく、2016年10月、米国エンデュランス・スペシャルティホールディングスを約6,300億円で買収している。

マーケット規模が大きく、成長が期待できるが…

 とはいえ、なぜ介護なのだろうか? SOMPOホールディングスは 「当社グループは、介護事業が『安心・安全・健康』に資するサービスを提供する『当社のグループ経営理念』に合致し、また、介護市場が周辺事業領域を含めてマーケット規模が大きく、今後も高い成長が期待できる分野であると考えております。」(2015年12月8日 SOMPOホールディングスの介護事業戦略について)としている。

 だが、スタートは決して順風満帆とはいえない。ワタミの介護買収時の施設入居率は、「ブラック企業」といわれたのがこたえてか、70%台に留まっている。メッセージでは、系列会社が運営する介護付き有料老人ホームで入居者の転落死や虐待が相次いだ。

 信頼回復と集客の向上が大きな課題だが、同社の経営管理力、コンプライアンスの徹底、いわゆる介護ロボットの活用も含めた介護のIT化などへの投資、職員待遇の改善などで徐々に成果が出始めているという。一朝一夕には効果が現れにくい事業だけに、今後に期待するところ大だ。

まとめ: M&A Online編集部