山一証券が破たんして今日で20年になる。1997年11月24日、自主廃業の届けを出し、四大証券の一角が崩れた。この1週間前には北海道拓殖銀行が行き詰まり、都市銀行として初めて破たんした。「悪夢の一カ月」を経て、業界版図は一気に塗り替えられることになった。

3度目の「復活」はなかった

 山一証券といっても、今の20代、30代の人にはピンとこないだろう。それ以上の年代層には、「社員の皆さんは悪くありません。私たち経営陣が悪いんです」と号泣会見した野沢正平社長の姿が思い出されるに違いない。

 破たんのマグニチュードは大きいと言わざるを得なかった。負債総額は3兆5000億円と戦後最大。顧客からの預かり資産は約24兆円。顧客資産保護のため、日銀は無担保・無制限の特別融資を直ちに実施した。

 山一証券はバブル崩壊後、業績悪化が常態化していたのに加え、総会屋への利益供与事件による信用失墜などで信用不安が急速に拡大。株価は一時58円まで下落し、最後は市場が“退場”を突き付けた形となった。簿外債務2648億円も判明し、この大半が「飛ばし」と呼ばれる損失隠しによるものだった。

 実は、同社の破たんはこれが初めてではなかった。1964(昭和40)年の証券不況で実質倒産し、戦後初めての日銀特融の発動を受けて再建を果たしたが、再び破たんに追い込まれた。もう3度目の復活への道はなかったのだ。

証券大手は野村、大和の2グループに

 戦後、野村証券、大和証券、日興証券、山一証券が四大証券と呼ばれてきた。山一は脱落し、日興(現SMBC日興証券)は曲折を経て、2009年に三井住友フィナンシャルグループ<8316>に加わった。この結果、独立系大手は野村ホールディングス(HD)<8604>、大和証券グループ本社<8601>の2グループとなった。一方、SMBC日興は、みずほ証券、三菱UFJ証券ホールディングスと同じ銀行系証券として括られる。

「悪夢の一カ月」と形容される1997年11月。月初の3日、業界7位の準大手、三洋証券が会社更生法適用を東京地裁に申請したのが始まりだ。負債総額は約3700億円と山一の十分の一だが、これが金融ドミノ倒しの引き金となった。

破たんのドミノ、北海道拓殖銀倒れる

 17日、今後は北海道拓殖銀行が破たんした。拓銀は資金量で都銀10行の末席にあったが、貸出中の不良債権は約13%と都銀中最大で、かねて信用不安が広がっていた。自主再建を断念し、北海道を地盤とする第二地銀の北洋銀行に大部分を営業譲渡した。

 当時、都銀をはじめとする、いわゆる大手銀行は20行あった。都銀10行、長信銀3行、信託7行だ。拓銀のケースは都銀のみならず、大手銀行として初めての破たん劇でもあった。

 都銀は前年1996年4月、三菱銀行と東京銀行が合併して東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)が発足し、10行体制がスタートしたばかりだった。また、拓銀ショックの翌1998年には、日本長期信用銀行(現新生銀行<8303>)、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行<8304>)が破たんし、長信銀3行体制が崩壊した。

大手銀行、5グループに再編

 大手20行は都銀、長信銀、信託の垣根を越えて再編・統合が繰り返されてきた。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、みずほフィナンシャルグループ<8411>、三井住友フィナンシャルグループを「三大メガバンク」と呼んでいる。これに、りそなホールディングス(HD)<8308>、三井住友トラストホールディングス<8309>が大手銀行グループとして続く。新生銀行、あおぞら銀行を除き、現在、これら5グループの下でかつての大手銀行は集約された。

 20行体制時の銀行名がそのまま残っているところは皆無だ。三和銀行、東海銀行はUFJ銀行を経て三菱東京UFJ銀行に、富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行はみずほ銀行に、住友銀行とさくら銀行は三井住友銀行に、あさひ銀行と大和銀行はりそな銀行に姿を変えた。

 7行あった信託はどうか。三井住友信託銀行はかつての住友、三井、中央の3信託が合流した。同行は、信託専業として唯一単独で銀行グループを形成する三井住友トラストHDの下で中核を担う。三菱UFJ信託銀行の旧行は三菱、東洋、日本。安田はみずほ信託銀行となった。

〇1997年11月当時の大手銀行20行

当時現在
  東京三菱銀行  三菱東京UFJ銀行
  三和銀行  UFJ銀行を経て、三菱東京UFJ銀行
  富士銀行  みずほ銀行
  住友銀行  三井住友銀行
  第一勧業銀行  みずほ銀行
  さくら銀行  三井住友銀行
  あさひ銀行  りそな銀行、埼玉りそな銀行
  東海銀行  UFJ銀行を経て、三菱東京UFJ銀行
  大和銀行  りそな銀行
  北海道拓殖銀行  消滅
<信託銀行> 
  三菱信託銀行  三菱UFJ信託銀行
  住友信託銀行  三井住友信託銀行
  三井信託銀行  中央三井信託銀行を経て、三井住友信託銀行
  安田信託銀行  みずほ信託銀行
  東洋信託銀行  UFJ信託銀行を経て、三菱UFJ信託銀行
  中央信託銀行  中央三井信託銀行を経て、三井住友信託銀行
  日本信託銀行  三菱信託を経て、三菱UFJ信託銀行
<長信銀>   
  日本興業銀行  みずほコーポレート銀行を経て、みずほ銀行
  日本長期信用銀行  新生銀行(普銀に転換)
  日本債券信用銀行  あおぞら銀行(普銀に転換)

フィンテックのうねり、版図を塗り替えるか

 近年、流通系を中心に異業種からの参入により、ネット証券、ネット銀行の台頭が著しい。SBI証券、マネックス証券、セブン銀行<8410>、イオン銀行、ソニー銀行しかり…。さらに、AI(人工知能)などITと金融サービスを融合させる「フィンテック」の大波が押し寄せる中、情報系、ハイテクベンチャー系、スタートアップ系などの参入が予想され、新たな金融激変が訪れることになりそうだ。

 山一、拓銀が消えて20年の間に、業界地図は大きく塗り替えられてきた。今度は、既成プレーヤーに代わる新たな勢力が金融界に版図を広げていくことになるのだろうか。

文:M&A Online編集部