2017年12月14日、通信業界にビッグニュースが舞い込んできた。楽天が2018年に自前の通信回線を取得し、2019年中に携帯電話事業に算入するという発表だ。

 携帯電話事業の一般への普及は1985年、NTTが発売したポータブル電話機『ショルダーフォン』だといわれる。鞄のような大きさで、肩から下げて持ち運びできる電話機。

 時代は折しもバブル前夜。いま振り返ればちょっと滑稽だが、『ショルダーフォンを肩から下げ、華やかな時代を闊歩した経営者、ビジネスマン、OLを都会の街角でも見かけた。

 それから30余年、携帯電話は技術革新を遂げ、今日にいたる。そのビジネスの送り手である携帯電話事業各社もM&Aを繰り返し、現在は3社の寡占状況にあった。

 3社とは、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク。それぞれの契約数は順に、7536万件(75,360,900)、4967万件(49,665,200、沖縄セルラー電話を含む)、3910万件(39,102,300)で、3社合計で日本の人口をはるかに超える1億6413万件(2017年第2四半期、電気事業者通信協会)となった。

M&Aを繰り返し、急拡大した楽天の経営

 その牙城に斬り込むのが「グローバル・イノベーション・カンパニー」を標榜する楽天だ。2017年12月14日発表のニュースリリースによると、「新会社を設立し、2019年中にサービスの開始を予定。1,500万人以上のユーザーの獲得をめざす。資金調達の想定は、サービス開始時に約2,000億円、2025年には最大6,000億円になる」としている。

 楽天では2014年10月から『楽天モバイル』というブランドで、仮想移動体通信(MVNO=Mobile Virtual Network Operator)事業、いわば格安SIM事業の『楽天モバイル』を手がけている。契約者数は2017年11月に買収した『フリーテル』の分を合わせて140万人を超えている。今後、同社はその仮想移動体通信事業のノウハウを活かし、寡占状況が続く市場に割って入ることになる。

 その楽天のM&Aをいま一度振り返ってみたい。(https://maonline.jp/articles/rakuten?page=3

 楽天は2000年の店頭市場への上場後、矢継ぎ早にM&Aに着手、業容を拡大してきた。2002年まではIT関連の企業のM&Aが多く、以降は金融や通信などの異業種、さらに海外企業のM&Aが目立つようになる。

 異業種の分野では、2003年にマイトリップ・ネット(後の楽天トラベル)を日立造船株式会社から323億円で買収。同年にDLJディレクトSFG証券(現・楽天証券)の全発行株式の96.67%を約300億円で取得し、子会社化。2004年には、あおぞらカード(現・楽天カード)の全株式を約74億円で買収した。2010年にはイーバンク銀行の関連子会社化と「楽天銀行」への商号変更により、国内における金融部門については事業のラインナップを整えた。

 楽天を経て独立したベンチャー企業経営者は、「三木谷さんは、どんな新規事業プレゼンでも、お金がどう流れるかには厳しい指摘をしていました」と語る。その〝頭の中〟を具現化した事業展開だったともいえそうだ。

楽天のM&Aに“秘密兵器”はあるか

 楽天はこれまで、急拡大をM&Aによって実現し、“M&A巧者”ともいわれている。ただ、長らく寡占状態が続いていた携帯電話事業では、同じ手法は通用しにくいと見る向きもある。

 まず、楽天がめざすのは、国内契約者数の10%程度、1,500万人ユーザーの獲得である。その第一のターゲットは、契約者数3910万件のソフトバンクとなる。そのソフトバンクは、日本では携帯電話事業者として知られているが、売上の国内外比率でいうと、海外での売上割合のほうが高く「情報革命で人々を幸せに!」をめざす巨大な国際ファンド・グループと考えたほうがよいのかもしれない。国内携帯電話事業は依然大きな事業の柱だが、そこに留まることにはこだわっていないフシすら感じられる。

 むしろ、楽天はとしては、現在の携帯電話市場の10%、1,500万人を狙うのではなく、プラス1,500万人、市場規模としては1億7,500万人市場の実現に向けた戦略を練っているのかもしれない。それはマーケティングとしてはシェアの奪い合うものではなく、携帯電話の1人2台、3台の保有に向けた戦略ということができる。それならば、楽天が狙う低価格路線も、客を奪い合う戦略とは別の観点から考えられる。

 果たして、楽天のM&Aで、今後どのような“ウルトラC”が生まれるのか。2018年の楽天の動きに注目したい。

文:M&A Online編集部