産業用ロボット分野でM&Aの動きが表面化してきた。日本のロボットメーカーが他のロボットメーカーやロボット事業を買収する流れが強まる一方で、中国企業が日本のロボットメーカーを買収する動きも見え隠れし始めてきた。国際ロボット連盟の予測によると、産業用ロボットの稼働台数は2016年に180万台だったのが2020年には300万台に増えるという。旺盛な需要に支えられ、今後、企業買収などによる新規参入や事業拡大が活発化するのは間違いなさそうだ。

 神戸製鋼所<5406>は2017年12月1日付で三菱重工業<7011>の小型可変型溶接ロボット事業を買収する。神鋼の子会社コベルコロボットサービス(神奈川県藤沢市)が、三菱重工業の子会社MHIソリューションテクノロジーズ(広島市西区)の事業を継承するもので、これまでの据付型溶接ロボットに可搬型が加わることで、顧客ニーズへの対応力が高まる。コベルコロボットサービスは、これまで神鋼製の据付型溶接ロボットの保守を行ってきたが、買収後は社名をコベルコROBOTiXに変更し、可搬型溶接ロボットの開発や設計などにも乗り出す。

IoTでロボットが知能化する

    産業用ロボット業界では2年前にファナック<6954>が機械学習や深層学習の技術を持つ日本企業のPreferred Networks(東京都千代田区)に資本参加した。ロボットなどの機械がインターネットにつながり知能化することで、高度な自動化の実現を目指すのが狙いという。IoT(モノのインターネット)時代の到来を踏まえて、両社の技術を融合して、これまでにないシステムの登場が見込まれる。

 ほぼ同時期にオムロン<6645>は、ビジョンセンサー技術やロボット制御技術を強みとする米国の産業用ロボットメーカー、アデプト テクノロジーを買収した。オムロンは幅広い制御機器とオートメーション技術に強みがあり、アデプト社のロボット技術を取り込むことで自動車、デジタルデバイス、食品飲料などのメーカー向けに新しいオートメーションの提案が見込める。

M&A意欲は高まる一方

    買収を検討している企業も少なくない。安川電機<6506>は2025年度までにM&Aを積極化する計画で、ロボットはもちろん電気自動車や風力・太陽光発電なども対象とする。キヤノン<7751>もM&Aには前向きで、ロボットも対象の一つという。このほかにも技術提携や資本提携などが近年多く発生しており、正確な統計はないものの、業界団体である日本ロボット工業会でも「このところ、こうした案件が増えつつあるようだ」と分析する。

中国企業による日本のロボットメーカーの買収も

 日本企業による企業や事業の買収と並行して、中国企業による日本のロボットメーカーを買収する動きも見逃せない。すでに中国の美的集団が独ロボットメーカーのクーカを買収し、勢力図に変化が生じている。このほかにも中国のベンチャーキャピタルなどによる日本企業の買収話しはいくつかあり、業界内でも話題になった。中国が2016年に打ち出した製造業強化のためのロードマップにはロボットも含まれており、今後国上げてロボット生産技術の獲得と向上に動くとみられる。

ロボット周辺機器がターゲットか

 こうした動きに日本企業は警戒感を強めているが、「クーカは株主が不安定であったが、日本の企業にはそうしたところはなく、まず大丈夫」というのが業界内の大方の見方だ。日本のロボットメーカーは大手が多く、中国企業による買収の対象にはなりにくいことが予想される。だが、ロボットの周辺機器メーカーの中には中小企業も少なくなく、こうした企業がターゲットなる可能性は低くはない。今後、日本企業による買収と、中国企業による日本企業の買収がどのような展開を見せるのか。2025年に向けた攻防を注目したい。

国際ロボット展でも存在感を示し始めた中国企業

 2017年11月29日から12月2日までの4日間の日程で、東京都江東区の東京ビッグサイトで2017国際ロボット展が始まった。出展社数、出展規模とも過去最大で、期間中に13万人が来場する見込み。生産性向上、省力化のほか、人とロボットがいっしょに働く、協働ロボットも見どころの一つだ。安川電機、川崎重工業<7012>、ファナック、三菱電機<6503>、不二越<6474>いった日本を代表するロボットメーカーが、大規模な展示を行う一方で、小規模ながら中国企業と思われる展示も10件以上ある。これが現在のロボット分野における日中の力関係を表しているといえそうだ。2025年にはこれがどのような勢力図になっているのか。熱気に包まれたビッグサイトで8年後の姿が垣間見えた。

文:M&A Online編集部