M&Aで高級ファッションブランド輸送を強化

 2013年1月、欧州日本通運が高級ファッションブランド関連のフォワーディング(物流手配)やロジスティクス事業を手がける伊Franco Vago(フランコヴァーゴ)の全株式を取得。そして2018年3月には、高級ファッションブランドの倉庫運営や配送を手掛ける伊Traconf(トラコンフ)の全株式を取得し、子会社化した。買収金額は約190億円。トラコンフはヴェローナに本拠地を置き、欧州、米国、中国で高級ファッションブランド商品の倉庫保管や配送サービスを展開している。

伊Traconf(トラコンフ)物流倉庫
高級ファッションを保管するトラコンフの物流倉庫(同社ホームページより)

 日通はトラコンフと2013年に買収したフランコヴァーゴとの連携により、両社の顧客への相互アクセスが可能になるほか、ファッションロジスティクス分野で国際間輸送から製品保管、配送までの高品質な一貫サービスを提供できる。ファッションは流行に大きく左右される。「最も売れる時にピンポイントで商品を店頭に並べる」ことが勝敗の分かれ目で、「小ロットで企画・生産し、短期間で売り切る」のがファッション業界の「必勝モデル」なのだ。当然、成否のカギを握るのは物流になる。

 物流の国際競争は激しい。価格競争に巻き込まれないためにも、日通が得意とする高付加価値な輸送サービスで海外展開を図る。イタリアの2社のように、高級ブランド輸送に特化した企業を買収したのも、そのためだ。高級ファッションブランドは「安いが遅い」よりも「高くても速い」物流会社を選ぶ。もちろんファッションビジネスだけに、保管や輸送中に商品を汚したり傷つけたりするのはご法度。高級品輸送で実績のある日通ならば、こうした輸送品質の高さも「サービス」として提供できる。日通は貨物取扱量を競うのではなく、利益の増大を狙う。

大手の物流子会社を買収し、国内の「守り」も固める

 一方で防戦にも気を配らなくてはならない。国内法人向けのB2B物流市場に、海外物流会社の姿がちらついているからだ。独DHLグループで企業物流が専門のDHLサプライチェーンは2013年03月に、コニカミノルタ物流から全国十数カ所の物流施設や車両を譲り受け、コニカミノルタホールディングス<4902>の物流業務を受託した。外資系企業による国内メーカーの企業物流の取り込みが始まったのだ。

B2B輸送サービス
B2B物流は外資を巻き込んだ「激戦区」に

 こうした輸送ビジネスモデルは3PL(third party logistics、荷主企業に代わって最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築を提案し、それを包括的に受託し、実行すること。荷主や単なる運送事業者ではなく、第三者としてアウトソーシング化の流れの中で物流部門を代行して高度の物流サービスを提供できる)と呼ばれ、安定したB2B物流市場を狙う物流企業が目指す「究極の企業物流」だ。

 日通は2013年12月にNECロジスティクス、2014年1月にはパナソニックロジスティクスと、大手エレクトロニクスメーカーの物流子会社2社を買収し、3PL事業に本格参入している。この分野には国内運送会社も相次いで参入し、競争が激しくなってきた。近鉄エクスプレス<9375>は同年4月、同じくパナソニック<6752>の完全子会社で同社製品の輸出入や三国間貿易手続きを手がけるパナソニック トレーディングサービス ジャパンを買収している。

 内外トランスライン<9384>は2013年2月に国際複合一貫輸送業のフライング・フィッシュ・サービス(現・フライングフィッシュ)から国内の国際複合輸送事業を譲り受け、事業規模を拡大した。企業物流大手のセンコー<9069>は同年9月、家庭紙卸売りのアストを買収することで製造から販売までワンストップの商流・物流一体型のビジネスモデルを構築している。B2Bの法人物流では一日の長がある日通だが、3PLという新しい業態では内外物流業者と「横並び」ともいえる。宅配便事業を失った日通にとって、この分野は絶対に負けられない「生命線」だ。